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「おうちで!絵本ミュージアム」絵本への信念原動力 あじび学芸課長 ラワンチャイクンさん「感性育み、生きる知恵教える」

2020/11/25 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 新型コロナウイルスの影響で、8月からオンラインで開催中の「NTT西日本スペシャル おうちで!絵本ミュージアム」。2007年の初回から携わる福岡アジア美術館(あじび、福岡市博多区下川端町)のラワンチャイクン寿子(としこ)学芸課長は、初の試みに手探りで取り組んでいる。それを支えるのは「子どもが最初に出合うアートである絵本は、感性を育み、生きる知恵を教えてくれる」との信念だ。

絵本ミュージアムに初回から関わってきた福岡アジア美術館のラワンチャイクン寿子学芸課長

「ミュージアム」初のオンライン 体感、体験を大切に

 一般から募った作品「100かいだてのいえ」の展示が始まった15日、あじびの会場にラワンチャイクンさんの姿があった。今回唯一のリアルな展示がにぎわう様子に「作品から熱量を感じ、ひと目見て感動しました」と声を弾ませた。

会場には、絵本「100かいだてのいえ」にちなみ
一般から募集した「住んでみたい家」などの作品が並ぶ

 昨年の第13回までに延べ60万人もが訪れた絵本ミュージアム。05年に企画が持ち上がったとき、ラワンチャイクンさんは「単なる原画展ではなく、子どもたちが絵本の主人公になれるような展覧会に」と考えた。人気絵本「ぐりとぐら」に登場する卵の殻の車を展示するなど、作品の世界を再現し、写真も自由に撮れるようにした。以来、現実に体感するというコンセプトは一貫している。

 1999年の開館時から勤めるあじびを「公園のように、親子で気軽に来てもらえる場所にしたい。子どもは未来の鑑賞者だから」と知恵を絞ってきた。キッズスペースがあった熊本市現代美術館を参考に、アジア各国の絵本を並べたキッズコーナーを2005年に設けたのもその一例だ。

 絵本ミュージアムとともに、一人娘の成長も見守ってきた。多忙でも寝る前には必ず絵本を読み聞かせた。「絵本を介して生み出される、濃密なひとときが貴重だった」。思春期の難しい時期も本の話題が2人の心をつないだ。今、親元を離れて学生生活を送る娘との話題も専ら本だ。

 絵本ミュージアムに長く携わって感じるのは「子連れで美術館を訪れるハードルを低くできたのではないか」ということだ。職場体験で訪れる中高生から「小さい頃、絵本ミュージアムに来ました」との声を聞くと、その定着を実感する。


 絵本ミュージアムからは“副産物”も生まれた。会場で子どもたちの見守りを担当するボランティアたちが「絵本の読み聞かせをしたい」と申し出たのだ。数年の研修を経て、絵本ミュージアムの催しの一つとなった。12年、あじびの読み聞かせボランティアが正式に発足。月2回、キッズコーナーで読み聞かせ会を開いてきた。

 福岡市早良区の納田(のうだ)香代子さんは子育てが一段落したのを機に、ボランティア1期生に応募した。現在は読み聞かせや会場案内など複数の役割を担う。「絵本はしつけやマナー、人生の喜怒哀楽など、いろんなことを教えてくれる。読み聞かせは、子どもも大人も笑顔になるのがうれしい」。コロナ禍の本年度はまだ活動できていないのが、もどかしいという。

 オンライン開催は、遠方に住む人にも絵本ミュージアムの雰囲気を楽しんでもらえるという新たな可能性を示した。それでもラワンチャイクンさんは力を込める。「五感を使って絵本の世界を楽しめるのが、絵本ミュージアムの魅力」。来年は再び、あじびで開催したいと心から願っている。

 

関連企画「みんなでつくろう!100かいだてのいえ」多彩なアイデア137点

 「おうちで!絵本ミュージアム」の関連企画「みんなでつくろう!100かいだてのいえ」は、来年1月10日まで福岡アジア美術館で開かれている。

 いわいとしおさん原作の絵本「100かいだてのいえ」にちなみ、ワークショップの一環として「住んでみたい家」「好きな動物の家」を募集。段ボールキットを使って多彩なアイデアを形にした137点が寄せられた。

展示されているのは見ると楽しくなる作品ばかり。想像力豊かで個性にあふれている

作品は、美術館入り口に展示されており観覧無料。水曜休館。福岡アジア美術館=092(263)1100。(藤村玲子)

=(11月19日付西日本新聞朝刊に掲載)=

 

NTT西日本スペシャル おうちで!絵本ミュージアム2020
特設サイトを来年3月末まで公開。
自作して楽しめるコンテンツや、お薦め絵本の他、アナウンサーによるオンラインの読み聞かせを配信。
西日本新聞イベントサービス=092(711)5491(平日午前10時~午後5時)

 

 

 

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