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文学を描く 美術を読む 芥川と漱石、菅虎雄 <2> 幻の卒論 天才への憧れ 久留米市美術館【コラム】

2023/12/21 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 夏目漱石も芥川龍之介も、美術への関心が高かった。企画展を担当した久留米市美術館の森山秀子副館長は「特に芥川は自分の生き方にも美術を結びつけていた」と指摘する。

 芥川は東京帝大時代、優れた工芸家であり詩人でもあったウィリアム・モリス(英国)の詩について卒論を書いた。原稿は関東大震災で失われ、読むことはできない。小説家で文学研究者の澤西祐典さんは2015年に発表した論文で、芥川が自身の蔵書に残した書き込みを考察し、モリスの詩と芥川の小説のモチーフとの共通性として<臨終に際して超自然的に咲く花が、神の許しや往生の証として登場>する点を挙げている。

 ともに花の美に、救いを見いだそうとしたのだろうか。

 森山副館長は「芥川は、文学であれ美術であれ、表現は違っても天才に憧れ、芸術に殉じた人には共鳴した」と語る。

村山槐多「風景 松」(公益財団法人かみや美術館蔵)

 22歳で早世した洋画家で詩人の村山槐多の詩集には、<斯(か)くの如(ごと)く奔放でなければ、斯くの如く謙虚であり得ないかも知れない>と推薦文を寄せ、20歳で没した関根正二については、随筆「『我鬼窟日録』より」に<関根は死ぬまで画を書く真似(まね)をしてゐたと云ふ(略)関根君が死んでボクが生きてゐるのは偶然も甚しい気がする>とつづった。

関根正二「子供」(石橋財団アーティゾン美術館蔵)

 死の瞬間に、いかなる「花」を咲かせるべきか。その思いは芥川の脳裏から離れなかったことだろう。

=(12月17日付西日本新聞朝刊に掲載)=

1回目はこちら

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芥川龍之介と美の世界 二人の先達─夏目漱石、菅虎雄 2024年1月28日(日)まで、久留米市野中町の市美術館=0942(39)1131。西日本新聞社など主催。一般1200円、65歳以上900円、大学生600円。高校生以下無料。

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