特別展「博多のみほとけ」
2024/10/26(土) 〜 2024/12/08(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
2024/11/14 |
対外交流の窓口を担ってきた博多湾沿岸部には個性豊かな寺社がある。展示室を博多湾に見立て、それぞれの地で受け継がれた仏教美術を紹介する特別展「博多のみほとけ」(西日本新聞社など主催)が福岡市美術館(同市中央区)で開かれている。12月8日まで。 (文・野村大輔、写真・佐藤桂一)
博多湾を海側から見た航空写真が入り口で迎える。向かって右は糸島半島。会場でも右手に進むと、同市西区の小田(こた)観音堂に伝わり、近くの福寿寺が所蔵する「千手観音菩薩(ぼさつ)立像」が待ち構える。
平安時代の10世紀に作られた2メートル超の観音像は圧巻だ。衣の滑らかな表現とは対照的に、無数の手が力強さを放つ。何を持っているのか。一つ一つ確かめるのも楽しい。立地状況から航海安全との関係が指摘され、大陸との交流の歴史を物語る。
本展は寺社を西部、中部、東部の3地域に分けて取り上げる。西の糸島半島から、禅宗文化が育まれた同市博多区へ。栄西が開いた日本初の禅宗寺院の聖福寺、中国商人の謝国明の援助を受けた承天寺…。今も名をはせる古刹(こさつ)が多い。
居並ぶ立派な仏像の中で、聖福寺の「仏手(ぶっしゅ)」が目に留まった。13世紀、鎌倉時代の作。手首の先だけで指も欠けているが、約50センチの左手から高さ約4・8メートルの姿が推測される。親指と中指を結ぶ表現は日本に少なく、「中国風の仏像が想像される」と宮田太樹学芸員(仏教美術)は話す。
聖福寺住職を江戸時代に務めた仙〓(〓は「がんだれ」に「圭」)義梵(せんがいぎぼん)(1750~1837)は親しみやすい書画を残した。数々の“ゆるキャラ”の中には仏像も。その一つ、「釈迦(しゃか)三尊図」は荒々しい筆遣いで描かれているものの、脱力系の表情が印象深い。
同市東区の筥崎宮や志賀海神社には、かつて仏像が祭られ、それぞれ近くの寺に継承されたという。恵光院の「十一面観音菩薩坐(ざ)像」も明治期の廃仏毀釈(きしゃく)に伴う神仏分離によって、筥崎宮から移った。
13世紀の石像は異国情緒あふれる造形だ。筥崎宮が日宋貿易の拠点だったことを踏まえると、南宋時代の中国で作られ、持ち込まれた可能性もあるという。博多湾の仏教文化は対外交流を抜きに語れない。
美術館で仏像を見ながら各地の寺を疑似体験した後は、実際に寺へ足を運んでみてほしい。
「博多のみほとけ」展の観覧料は一般1400円、高校・大学生900円、中学生以下無料。9日午後3時から、宮田学芸員が展示品を紹介する「つきなみ講座」がある。聴講無料。定員180人(申し込み不要)。福岡市美術館=092(714)6051。
=(11月9日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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