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長崎県美術館「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載(下)

2025/09/04 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 長崎県美術館では、現在、戦争をテーマにした展覧会「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」が開催されています(~9/7)。被爆80年に当たる本年、本企画を担当した同館学芸員・森園敦さんに全3回にわたり連載いただきます。
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 現在開催中の「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」展は9月7日までの開催です。閉幕まであとわずかとなりました。

 さて最後の寄稿となる今回は、展覧会の最終章についてお話しします。「記憶の継承」と題した第7章では、二人の現代作家を取り上げました。被爆から80年を迎えた昨今、被爆者たちが次々とこの世を去っているという現状があります。被爆体験の継承は果たして可能なのか。その難しい課題を美術の側面から考えていくというのがこの章の焦点となります。今回は数ある作家の中から長崎にゆかりの深い森淳一と青木野枝を取り上げました。

©MORI Junichi, courtesy of Mizuma Art Gallery 撮影:山﨑信一
 

 森淳一は1965年に長崎市内に生まれ、大学に行くまでを過ごしました。大学院に進んだ頃から長崎の原爆をテーマとした作品を制作するようになります。今回の展覧会では9点の新作が展示されています。オニキスという石を削り研磨した《星翳》シリーズは、小さいながらも展示室において強い存在感を放っています。人型のようにも見えながら、一方で森は長崎の原爆・ファットマンのフォルムをも念頭に置きながら成形していきました。

青木野枝《原形質/長崎》  ©Noe Aoki, courtesy of ANOMALY 撮影:山本糾

 青木野枝は東京生まれながら長崎に深いゆかりを持つ彫刻家です。展覧会にあたり、まずは展示空間を見て頂き、自由に制作してほしいと伝えました。そして青木はウクライナやガザなど現在行われている凄惨な戦争を念頭に、被爆地・長崎で展示することの意味を考えながら制作を進めました。赤いガラスは2019年の当館での個展で初めて用いたことからも分かるように、青木にとって特別な意味を持っています。鉄の彫刻でありながら軽やかさを感じさせる作品が多いなかで、今回の作品はどことなく重厚な存在感を有しています。森と青木、両者の作品に共通するのは、戦争に対する深い悲しみと強い抵抗を感じ取れることでしょう。

 ゴヤの〈戦争の惨禍〉は、戦争時における人間の凄まじい暴力や狂気、そして絶望が繰り返し描かれますが、最後の82番《これが真理だ》では未来への希望と解釈できる場面が表され、版画集は幕を閉じます。またピカソの《ゲルニカ》では、暴力による人間や動物たちの悲惨な死が描かれながらも画面中央下部に一輪の花が描かれています。つまり美術は戦争の悲惨な記憶とともに、希望をも映し出してきたといえるでしょう。そこには芸術家たちの祈りが込められているようにも思えます。

 本展は美術作品を通して戦争と平和について考える機会を提供したいという思いから企画されました。被爆地・長崎からの祈りを感じ取ってもらえると幸いです。

長崎県美術館 学芸員 森園 敦

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