江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2018/06/08 |
改修工事のため休館中の福岡市美術館のコレクション展「モダンアート再訪」が11月まで全国4カ所の美術館・博物館を巡回している。4館が出品を強く望んだのが、1950~60年代に福岡を拠点に活動した前衛芸術集団「九州派」の作品だ。異彩を放った地方の芸術集団が残した作品群が注目を集めている。
同展は、福岡市美が所蔵するダリやウォーホル、草間弥生などの作品約70点を「身体」「イメージ」をキーワードに読み解き、20世紀美術の様相をたどる試み。市美が示した貸し出し候補百数十点の中から、4館がテーマに添って作品を選んだ。九州派関連は「福岡市美ならでは」と引きが多く、「メジャーではないのに意外だった」と市美の山口洋三学芸員の予想を上回る関心の高さだった。
鳥取県立博物館に続いて5月まで会場となった埼玉県立近代美術館(さいたま市)では、九州派の作品が、やはり市美が所蔵する関西の前衛芸術集団「具体美術協会」の作品とともに展示され、一つの章が設けられていた。
厚塗りの黒いアスファルト、ちりばめられた釘(くぎ)や金網。九州派を率いた桜井孝身の「リンチ」(58年)は異様な空気を漂わせる。山内重太郎が画面にガソリンをかけて火を放った「作品5」(同)も来場者を圧倒する威圧的な雰囲気をまとう。田部光子、石橋泰幸、尾花成春…九州派の作品がずらりと並ぶ空間は壮観だった。「関東でまとめて紹介するのは貴重な機会。アスファルトの独特な質感に激しさがある」(同館の吉岡知子学芸員)。
東京中心のアカデミックな芸術表現を批判し、「反芸術」「反東京」を掲げた九州派。福岡市美が地道に作品を収集し、調査研究を続けて回顧展にもまとめた成果は、地方で展開された異色の芸術運動として「同じ地方の公立美術館にとって参考になる」(吉岡学芸員)という。
埼玉会場では関係者によるトークイベントもあった。市美の山口学芸員は九州派を解説し、「田舎の絵描きが暴れた」と表現。元九州派の菊畑茂久馬さん(83)は中心メンバーが海外へ移ったことを振り返り、「だんだん壊れていった」と寂しそうに語った。
今回九州派と一つの空間を共有して展示された具体美術協会は既に世界各地で展覧会が開かれ、作品価格も高騰している。九州派は残っている作品の数が少なく、鳥取県立博物館の尾崎信一郎副館長は「今まで十分な評価を受けていなかった」と指摘する。
九州派は欧米由来のモダンアートから逸脱した存在と思われ、中央では十分な評価をされてきたとは言い難かった。今回のコレクション展で、あらためて20世紀美術の文脈に位置付けて発信されたことで、日本の戦後美術の大きな枠組みの中で再評価される機運が高まった。
(野村大輔)=6月4日西日本新聞朝刊に掲載=
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