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「豹変」する いわさきちひろ<上>挑戦 自由で実験的に描く【コラム】

2019/04/17 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

いわさきちひろは戦後、絵も描ける新聞記者として記事の挿絵や婦人雑誌の表紙などの仕事を始めた。1948年ごろ、後に多くの出版に携わる「盟友」となる稲庭(いなにわ)桂子がちひろの前に現れる。ちひろが好きなアンデルセンの「お母さんの話」を紙芝居にしてほしいとの依頼だった。

「死神(しにがみ)を追いかける母親」。1948年ごろの紙芝居「お母さんの話」(習作)で、稲庭桂子の依頼を受けた子ども向けデビュー作


2年後に出版され、50年度の文部大臣賞を受賞した。画料は当時では破格の3千円。ちひろは新聞社を辞めて、子どもを題材とする画家として生きる決意をした。
時代は高度成長期に歩みを進め、ちひろは絵本の挿絵などで人気童画家になった。しかし「少女趣味だ」などの批判も受けた。戦争体験から共産党に入党したちひろだが、党内からは「絵に泥臭さが足りない」との指摘もあったという。
葛藤はあったのか。長男で美術・絵本評論家の松本猛さん(67)は「ちひろは自分の絵に自信があった」と語る。ただ当時は、童画家や挿絵画家は一段低い画家との見方も根強く存在した。ちひろは「童画の世界からさし絵ということばをなくしてしまいたい」(64年、講談社「なかよしだより」)と悔しさを表した。

「帽子の少女」。1970年の雑誌「子どものしあわせ」から。田辺徹が社長を務めた草土文化発行


そのころ出会ったのが出版社「草土文化」社長の田辺徹。「子どもが題材なら自由に描いていい」と、月刊誌「子どものしあわせ」の表紙絵を依頼してきた。顔の輪郭線を描かなかったり、パステルを大胆に使ったりするなど実験的な描き方に挑戦する場となった。
初出の63年3・4月合併号に、ちひろは「『ドロ臭さをださなければ』などと苦しむのは、もう、やめよう」と書く。「子どものしあわせ」の表紙絵は、絶筆となった74年8月号まで12年にわたって続く。=4月3日 西日本新聞朝刊に掲載=

 

※画像はちひろ美術館提供

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