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九州国立博物館の学芸員に展覧会「法然と極楽浄土」と九州布教のキーパーソンについて聞いてみた

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アルトネ編集部
2025/10/31
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現在、九州国立博物館で開催中の「法然と極楽浄土」。本展覧会は法然上人が浄土宗を開いてから、昨年(令和6年)850年を迎えたことを機に開催される展覧会です。本展は東京、京都、九州(福岡)で開催されるのですが、浄土宗と九州には深いつながりがあります。

浄土宗は先ほど触れたように平安時代末期に法然によって開かれたのですが、浄土宗を全国各地に広めたのは法然の弟子たちでした。そのなかでも重要な役割を果たしたのが筑前国香月(北九州市八幡西区)に生まれた聖光上人です。
聖光上人は、浄土宗の第二祖(法然の教えを正しく受け継いだ祖)であり、開祖・法然上人から直接教えを継承した僧侶です。地元で仏教を学び、22歳の時に比叡山に登って天台教学を学びましたが、30歳代なかばで当時65歳の法然を訪ね、その弟子となりました。そして元久元年(1204)に法然の指示によって鎮西(九州)に戻り、布教を行いました。聖光上人は、ただ一心に「南無阿弥陀仏」と称える称名念仏が浄土宗の正行(一番大事な修行)であると説いて、現在の浄土宗の基礎を築いたのです。
また宗祖・法然の没後、その教えを伝えていく門徒間でも理解が少しずつ異なっていく状況を嘆き、法然の真義(正しい教え)を後世に伝えるために記したのが「末代念仏授手印」です。この「末代念仏授手印」が、浄土宗における師資相承(師匠から弟子に教義を伝える事)に用いられることで浄土宗の教義継承に重要な役割を果たしていく事になります。


九州国立博物館学芸員で本展の担当である森實久美子さんに聖光上人についてお話を伺いました。

Q:後世に残された史料などから、聖光上人はどのような人だったと考えられますか?

森實:純粋に「法然さんの教えを皆に伝えたい」と考えていた人だったのではないかと思います。ただひたすらに法然上人の教えを伝えたい。そのために天台宗から浄土宗に転向し、道を変えるほどに惚れこまれたんだと思います。また称名念仏の力を愚直に信じていたのではないかと思います。
がっしりとした体格で、額に青筋が立っていて怒ったら怖いかも、(笑)。残された肖像から感じられる法然上人が寛容な、穏やかな人という印象を抱く一方、聖光上人はもう少し真面目な感じが肖像彫刻から伝わります。

聖光上人坐像 鎌倉時代 福岡・善導寺(久留米市)

また、聖光上人は九州に来てから、自らが往生するまでに48の寺院を九州内に建立したといわれています。実務的な能力も優れていたのではないでしょうか。

Q:聖光上人が九州の浄土宗普及にあたってどのような影響を与えたのでしょうか。   森實:浄土宗は大きく西山派と鎮西派に分かれるのですが、鎮西派は実践的で念仏をひたすらに称えること、西山派は信仰心で阿弥陀仏に近づくことを目指していきます。京都で浄土宗が弾圧にさらされる中で、九州に鎮西派がこれだけ広がったのは聖光上人の力に依るものが大きかったのではないかと思います。


Q:九州で聖光上人ゆかりのお寺があれば教えてください。
森實:久留米市の善導寺は聖光上人が大本山として建立した寺です。こちらには聖光上人の肖像彫刻が三祖堂に善導大師(中国・唐の僧)、法然上人と共に安置されています。
また、福岡市の善導寺も聖光上人によって建立されたお寺です。同寺に安置されている「善導大師立像」は聖光上人が善導大師が博多に着く夢を見たので実際に博多箱崎津の海に行ってみたら松原の樹下に流れ着いていたという逸話が残されています。その善導大師立像も本展に展示されています。

福岡市博多区中呉服町にある善導寺。福岡市内の中心部にある古刹
善導大師立像 鎌倉時代 福岡・善導寺(福岡市)

そのほか、北九州の吉祥寺は聖光上人が生まれた場所に建立された寺院として知られています。

Q:まもなく展覧会の後期が始まります。後期に展示される作品のなかでご紹介したい展示物はありますか?
森實:後期の目玉は綴織當麻曼陀羅です。1200年以上前のタペストリーが残されていること自体がそもそも凄い事です。また『観無量寿経』というお経に説かれた極楽浄土の世界が忠実に織られていることが浄土宗の最も大切な寺宝(根本曼荼羅)とされる理由です。写真ではその真価がわからないと思いますが、会場で実物をご覧いただくと、その素晴らしさがわかると思います。こちらは奈良の當麻寺でも非公開の作品なので、この機会を逃すと見ることができないかもしれません。

国宝 綴織當麻曼陀羅 中国・唐または奈良時代 當麻寺※展示は11月11日から

また、ある尼僧(実は阿弥陀様)から蓮糸を多量に準備するようにと言われた姫が、実際に蓮の糸を準備したら観音様の化身である女性が現れて曼荼羅を織り上げたという「綴織當麻曼荼羅」にまつわる伝説をもとに描かれた「当麻曼荼羅縁起絵巻」も必見です(後期は下巻)。

国宝 当麻曼荼羅縁起絵巻(巻下) 光明寺※展示は後期(11月5日)から

個人的なお薦めは「地獄極楽図屏風」です。

地獄極楽図屏風 鎌倉時代 京都・金戒光明寺※展示は後期(11月5日)から

屏風の中に赤い丸が描かれていますのがわかりますか?その丸の中に蓮台(蓮の花の台座)が浮いていて、往生の際まで念仏を称えた人はその蓮台に乗って極楽にいけるのです。

地獄極楽図屏風の右腰部分 阿弥陀仏が直接お迎えいただける人もいる

ちなみに地獄に落ちるか否かの審判の場面にも赤い丸が描かれています。これは地獄に落ちる直前で蓮台が迎えに来たものかと思われます。間一髪のところで日頃の行いが良かったことが閻魔様の調べで判明してお迎えにきたのか、最後の最後まで念仏を称えた結果、ギリギリで救済のお迎えが来たのかまでは不明です(笑)。

地獄極楽図屏風 左腰部分

11月5日から会期後半を迎える「法然と極楽浄土」。国宝 綴織当麻曼荼羅が公開されるのは11月10日から、そして展覧会は11月30日(日)までです。

展覧会チケットはこちらから

 

 

 

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