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“文化の熱源”を伝播する―― 福岡のエネルギーとインフラを支える明治産業が発信するソフトパワーのはなし。

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アルトネ編集部
2024/11/15
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 福岡~九州で文化を育む人や活動に注目し、その一つひとつの営みに込められた‟熱”を伝える「文化の熱源」というウェブサイトがあります。本サイトを手掛けるのが、ガス・不動産という分野で、生活のインフラを支える明治産業。 なぜ一企業がこの熱量でアート活動を?そんな疑問を胸に、業務部で広報を担当している、田邉万由子さん、「文化の熱源」の企画を担当されているフリー編集者・三好剛平さんにお話しを伺いました。

――「文化の熱源」が生まれた背景について教えてください。
(田邉)
 明治産業がエネルギーとインフラにまつわる企業であることがその理由です。 私たちが普段の業務を通じて提供するのはガスや不動産といった、いわば‟住”に関わるものですが、地域やコミュニティに根付いた文化やアートもまた、人々のくらしを支える重要な基盤(インフラ)です。これらを応援し、その熱量(エネルギー)を高めていくこともまた、私たちの使命なのだと考えました。

――取り上げる対象や編集についてお考えをお聞かせください。
(三好)
 地域の文化と考えたとき、案外、地元の人ほど、自分たちの足元で育まれている文化資源を顧みる機会がないし、その価値を見過ごしてしまいがちです。すでにそこにインフラとしてあるのにも関わらず、その魅力に光があたっていないものが、私たちの街にもたくさんあります。

 「文化の熱源」というウェブメディアでは、そういうものに改めて目を向け、一つひとつの活動のコアにあるものを紐解きながら、その熱を拡げていくことを目指しています。ガス・不動産を通じてエネルギーとインフラに携わる会社だからこそ、そういった活動も意味を持って続けられるのではないかと思いながら企画編集に携わっています。
 

「文化の熱源」の第1回目では、映画のフィルムを未来に向けて所蔵・収集する福岡市総合図書館フィルムアーカイブを特集。アーキビストの第一人者で詩人としても活動する松本圭二氏に取材し、その成り立ちや活動、意義や使命についてレポートしている。

――記事の中には、人や施設について紹介しているものだけでなく、社内のアート活動について取り上げられているものもあります。社内でのアート活動についてお聞かせください。

(田邉)
 2023年3月より、「MAC(Meiji Art Culture)会議」と呼ばれる、社員自らが企画・実施する独自のアート活動を行っています。月に2~3回、6人程のメンバーが集まり、自分たちでプロジェクトを考えて、実際にかたちにしてみるまでの活動を続けています。
 これまで行ったものとしては、みんなでひとつの絵を見て、その作品について思ったことを自由に発言し、意見交換をするというVTS(Visual Thinking Strategy)という美術鑑賞の手法を取り入れたワークショップがあります。また、メンバーが気になったアーティストにお声がけをし、実際に会社に来ていただいて社員みんなで研修を行ったものもありますし、そういった活動を地域の小学校とともに行うこともあります。

(三好)
 しかもその企画作業から実施までを勤務時間中に、一般社員も巻き込みながらやっているという笑。

ウェブサイト「文化の熱源」には社員自らが企画・実践したプロジェクトのレポートも。
(左)デザイナーの鹿児島睦さん、博多人形師の中村弘峰さんを講師に迎えた出張ワークショップでの一コマ。(右)演劇ユニットpuyeyを招いたハラスメント研修での一コマ。


――業務中にアート活動とはなかなか特異な実践ですね。そもそもなぜアートなんでしょう?

(田邉)
 私も入社当初は、本業でない文化活動をどうしてやっているんだろうとも思っていました笑。
 ただやっていく中で思ったこととして、先のVTSを通して、「この人はこんなことを考えているんだな」と仕事だけの関係性では見えてこなかったその人の側面が見えてきて、コミュニケーションする上で理解が深まったり、意見交換が活発になるということはありました。
 私個人のことで言えば、アートに興味があるかどうかもわからないっていうところからのスタートなのですが、そうした中でも、それぞれ一人ひとりが自由に企画を考え、実践していいという雰囲気がある――会社の理念にもある「失敗を恐れないでチャレンジする」ということや、群れの中でも最初の一歩を踏み出し、新しい風景を作り出す「“ファースト・ペンギン”であれ」という思想ともつながっているような気がしています。

(三好)
 それぞれの企画や、社員の方々の費やされる時間が、必ずしも合目的なゴールに向かうだけのものになっていないことに毎回驚かされますが、実はそこがポイントなのかもしれない、とも感じています。
 それは社長が普段からおっしゃられている「仕事とあそびの境界をなるべくなくしていきたい。あそぶように仕事をして欲しい」ということとも関係があるのかなという気がしています。
 何かに熱中していた後にふと振り向いてみると、思ってもいないところまで辿り着いていたり、誰も見つけていないルートが見つかっていたりする。
 そんな‟あそび”の可能性を、ただ言葉で掲げるだけでなく本気で信じているからこそ、結果を急がずに待つことが出来るのだろうし、それが具体的な成果にも結びつき始めているのだと思います。

――こうなったらいいなというヴィジョンがありましたら教えください。

(田邉)
 一つひとつの活動を積み重ねていって、将来的には、振り返ることのできるツールになったらいいですね。
 アーティストとのワークショップも、ただ参加するだけにとどまらず、「文化の熱源」で言語化し、記録していくことで、改めてアーティストの思想に触れ、深く理解することができるということがありました。
 そういったことを社内で共有し続けることで、活動している私たち自身がアート活動の意義を再認識していくことがありますし、ウェブメディアですから、社外の方、この街に関わりのある方々へその熱を届け、共有していければいいと思っています。

(三好)
 文化の分野に限らず、何かの種が芽吹いて育ち、皆で実りを享受できるようになるまでには、本来長い時間と支えが必要です。
 その中で、熱量をもった個人や団体、施設などが活動を通じて大切にしているものを丁寧に見出し、記事として手渡しで一人ひとりに伝えていく。そのような取り組みが、新しい熱源人であったり、熱源的な活動を支える人を生み出すことに繋がればと願っています。
 そして、街の未来の土壌を育むこうした活動を、たとえ時間がかかっても続けていくことが、今後、地域のエネルギーやインフラを担う会社が果たし得る、重要な役割となってくるのではないかとも感じています。

 

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