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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 42

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山出淳也
2021/04/29
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アイデアはどこからやってくる?

 スタッフから「企画のアイデアはどうやって生まれるのか」と問われた。僕が1から企画したものは軽く100を超えている。そのいずれも「アイデアが降ってきた!」なんてことは、全くない。観察し、整理して、編集することを繰り返すだけだ。無から有を生むなんて凡人の僕にはできない。

 10年ほど前、僕たちは課題を抱えていた。芸術祭鑑賞者が町を歩いていても、彼らが求めていることが耳に入らず、すぐに改善すべきことが分からなかった。そして、アートとともに町を楽しんでもらいたくても、鑑賞者全員に等しく伝える手段を持っていなかった。

 時々、出張先でフリーペーパーを手にし「地元の人が案内する店はどんなとこだろう」なんて思いながら1人晩酌する。特集記事よりも広告記事の面積の方が多く「地方では広告をビジネスモデルとするのは大変なんだな」なんて、その冊子を見ながら余計な心配を始める。

 自分たちの課題とフリーペーパーの問題を一つ一つ並べ、解決方法を考え生まれたのが「旅手帖 beppu」という冊子。無料で200ページ、広告は一切入っていない。店主が何を大切にしているのか紹介することにこだわった。

 デザイナーとカメラマンはプロにお願いするが、取材する人材は未経験者ばかり。プロなら電話で済ませるところを、わずかなコメントでも彼女たちは店を訪ね、店主と話し込み、2時間も帰ってこない。でも、それが大切だと思った。信頼関係が生まれ、取材先は僕たちとアートを求めて町を訪れる人との接点になった。「案内看板がわかりにくいみたいだよ」。鑑賞者が困っていることが、店主を通じて僕の耳に届くようになった。

 取材先は全て僕たちがお勧めしたい店。アート情報も掲載するので鑑賞者は皆冊子を手にする。アート鑑賞や掲載店舗で使える金券を発行し、その手数料で制作費の多くを回収した。

 課題を適切に捉え、慣習にとらわれず、あるものを活(い)かしながら解決する。全ての企画はそうやって生まれる。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(1月11日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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