生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎
2022/10/29(土) 〜 2023/01/22(日)
10:00 〜 17:00
久留米市美術館
2023/01/12 |
久留米市美術館では、同市出身の洋画家、青木繁(1882~1911)と坂本繁二郎(1882~1969)の画業をたどる「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」を開催中です。66年ぶりの「二人展」では約250点の作品を通して、目指す方向も性格も、生きた時代の長さも異なる二人の「旅」を、時に交差させながらひもときます。
本連載では、久留米市美術館の方々から、4回にわたって見どころを紹介していただきます。
1回目はこちら
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二人がそれぞれ「能面」を描いた時期には、約40年の隔たりがあります。青木は東京美術学校(現・東京藝術大学)の学生だった頃に、坂本は還暦を過ぎた1944年頃から描き始めました。ここでは、二人の「能面」を比べてみたいと思います。
青木は、東京帝室博物館(現・東京国立博物館)の平常陳列で展示されていた能面を、舞楽面や行道面、伎楽面といった様々な仮面とともにスケッチしました。猩々、泥眼、小喝食、曲見、般若、大童子、大飛出などいろいろな種類の能面を、それぞれの特徴を生かすように角度を変えて描いています。青木の中に、このスケッチ群を元にした作品の構想があったのかどうか詳らかではありませんが、スケッチには名称や作者名、制作年などの説明が添えられており、造形だけでなく意味や伝来といった背景にも関心が向いていたと考えられます。青木にとって、能面やその他の仮面を描くことは、当時学んでいた記紀をはじめとする神話や古来の伝統芸能と繋がるひとつの方法でした。
それに対し、坂本の関心は、能面の造形そのものにあったといえます。名品かどうかにこだわらず、骨董屋で惹かれた面を収集するなどして、モティーフにしています。《能面》に描かれているのは、無造作に広げられた布の上にあおむけに置かれた能面と、裏返しにされたもうひとつの面。九段の華族会館能楽堂で能を鑑賞した30代の頃から、画題としての能面をあたため続け、自身も能を嗜んでいたと語っていますが、作法にとらわれず、あくまでも画の素材として、その造形に視線を注いでいます。その一方で、坂本は「能舞台のあらゆる瞬間をたち切っても、ひとつひとつが、見事な絵になっている」と述べており、絵と能舞台には共通点が多いと感じていました。舞台に役者が身を置くように、画面の上でモティーフを在るべきところに配置することを、制作において意識していたようです。その姿勢は、能面に限らず、モティーフとするすべてに対しても同様でした。
原口花恵(久留米市美術館)
※その4に続きます
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