特別展「浄土九州ー九州の浄土教美術ー」
2018/09/15(土) 〜 2018/11/04(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
末吉武史 2018/09/18 |
「仏像学芸員」に必要なもの
学芸員に求められる能力とは何か?このような質問があったとすると、様々な答えが思い浮かびます。
専門分野の知識や論文などを書く力はもちろん、作品・資料に対する探究心や好奇心、展覧会を企画する際に必要になる体力、根気、交渉力、計画性、経営センスなどなど・・こうした資質というべき能力はとても大切ですが、実際の現場では作品・資料の取り扱いや輸送、展示ディスプレイ、保存や修覆に関するいろんな知識や技能も必要です。
なかでも、仏像(特に地方の)を専門にする学芸員に限れば、体力と自動車の運転と写真撮影の技術はかなり重要度が高くなるように思います。その理由は・・
一、仏像は大きくて重い場合がある。
二、仏像は山奥の辺鄙な場所にあることも多い。
三、立体物だから正面だけでなく各部の造形がわかるきっちりした写真が必要。
今回の浄土九州展でも昨日は佐賀、今日は熊本というように、福岡市役所マークのついた庁用車アルト号にカメラ機材を積んでずいぶん走りまわりました。
調査ではまず仏像を仏壇から降ろして積もり積もった埃を刷毛で払い、各部の計測をおこない、形状や構造を記録し、そしてバックペーパーの上に仏像を置いて前後左右、像底と写真を撮っていきます。大きさや作品としての重要性にもよりますが、一体の仏像を調査するのに半日かかることもあります。
仏像の下からヤモリが出てきたり、台座の中からネズミのミイラが出てきたりしても一切動ぜず、汗と埃にまみれ、時には寒さに震えながら仏像の観察に集中します。そんなことをして何が楽しいのか?と思われる方もおられるでしょう。
でも、凄い仏像や重要な銘文などを発見したときの喜びは格別です。例えるなら、チョコボールの金のエンゼルマークが当たった(おもちゃの缶詰がもらえる)気分とでも言えばわかるでしょうか(わかりませんよね)。
最後に僕が尊敬する熊本の大先輩O倉さんの名言を紹介します。
「学芸員は車の運転と写真ができれば十分バイ。」
O倉△!(O倉さんカッケー)
=2018年7月10日福岡市博物館ブログに掲載=
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