九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  西方に極楽あり9 この仏像、何年? 【連載】

西方に極楽あり9 この仏像、何年? 【連載】

Thumb micro 2cf83d8d0a
末吉武史
2018/09/20
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

この仏像、何年?

「この仏像は鎌倉時代に制作された可能性が高いと思いますが、後の時代の修理も入っているので・・」

仏像学芸員はお寺などで調査をさせてもらうと、相手に何がしかの結果を伝えねばなりません。しかし、住職は「はあ、そうですか・・」と狐につままれたような表情で頷き、「以前、○△先生は平安時代とおっしゃいましたがね?」と、半信半疑の眼差しを向けてこられます。そこで、今回は仏像の制作年代をどのようにして見分けるのか?という問題を取り上げましょう。

ご存知かもしれませんが、仏像には特定の時代や地域、仏師集団などに共通する「様式」があります。例えば平安時代には平安時代の、鎌倉時代には鎌倉時代の様式があって、同じ「阿弥陀如来坐像」でも体の厚みや衣のシワ(衣文=えもん)のあらわし方、構造や技法などもかなり異なります。自動車などの乗り物や私たちが身に付ける衣服のデザインと同じですね。要は各時代の典型的な仏像を数多く頭に入れておけば、それが時代を計るモノサシになるということです。

ただ、仏像の中には過去の様式をわざと取り入れたものや後世の修理による改造、あるいは九州という地域性を考慮すべきものもあって、なかなか一筋縄ではいかないのも事実。
以下は「佐賀の番長」ことT氏と佐賀県多久市・専称寺の阿弥陀如来坐像を調査したときのやりとりです。

専称寺阿弥陀如来坐像(正面)

 

 

同 左側面
同 背面

 

末吉「ほら、構造が内刳(うちぐ)りのない一木造(いちぼくづくり)で翻波式(ほんぱしき)の衣文に渦巻文が刻まれている。耳朶不貫(じだふかん=耳たぶに孔が開いてないこと)だし、頭も六波羅蜜寺の薬師みたいに肉髻(にくけい)と地髪部の段差が少ない。10世紀後半でどう?」

T氏「ん~。まあそうかもしれんばってん、渦巻文とかは図像を写したら時代が下ってもできるとよ。それに全体にボリュームが少なかけん、11世紀前半じゃなかと?」

こんな〝攻防〟を持てる限りの知識と経験、観察力を駆使しながら、それはしつこく重ねて制作年代を突き詰めていきます。そしてこんな会話も・・

T氏「1015年。」
末吉「985年。」

もちろん、様式だけで何年と断定できるはずがなく、制作年代だけが作品理解のすべてでもありません。これは良くも悪くも、熊本の大先輩O倉さんの「はっきり物を言わんといかんバイ!」という指導の賜物でしょう。

でも、もし仏像に耳と心があったとすれば「惜しい!」と呟いているかもしれませんね。

=2018年7月17日福岡市博物館ブログに掲載=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini bb90a07d45
終了間近

「浦川大志個展 スプリット・アイランド」

2026/01/06(火) 〜 2026/03/22(日)
福岡市美術館

Thumb mini 97da41b20d
終了間近

開館25周年記念
出光美術館やきもの名品展

2026/01/17(土) 〜 2026/03/22(日)
出光美術館(門司)

Thumb mini 43340e6593
終了間近

宇治山哲平・坂本善三 展

2026/03/07(土) 〜 2026/03/22(日)
みぞえ画廊 福岡店

Thumb mini 91772f4655

喜久三栗八御目見得興行 画廊尾形宇久世乃情

2026/03/20(金) 〜 2026/03/29(日)
ギャラリー尾形

Thumb mini e1a3b92ce4

安部貴住 個展「夜の光」

2026/03/21(土) 〜 2026/03/31(火)
art space tetra(アート・スペース・テトラ)

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 86df2d5b57
ニュース

笑い飯哲夫のおもしろ仏教講座 福岡市博物館で開催決定!

Thumb mini 5df594b110
レポート

天か地獄か、死者は10人の王に裁かれる -エンマと地蔵菩薩-【レポート】

Thumb mini 88d103a641
レポート

仏教に詳しくない私が、「浄土九州」に行ってきた!【レポート】

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<84> 【連載】開かれる世界 異常事態の渦中で 取り戻される日常

Thumb mini ba3135c76e
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<83> 【連載】コロナ禍の変化 国内の文化資源だけで 示唆に富んだ企画展も

特集記事をもっと見る