日中文化交流協定締結40周年記念
特別展「三国志」
2019/10/01(火) 〜 2020/01/05(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2019/11/26 |
来年1月5日(日)まで、福岡県太宰府市で開催中の特別展「三国志」。小説や漫画、ゲームなどにもなった「三国志」の世界は、時代を超えて多くの人に親しまれてきた。立命館アジア太平洋大(APU、大分県別府市)学長で、ライフネット生命創業者の出口治明さんもファンの一人。歴史好きで知られ、歴史関係の著作も多い出口さんに三国志の魅力、展覧会の見どころなどを聞いた。
三国志ほどわが国で人口に膾炙した物語はない。ただその多くは明代の小説「三国志演義」によっている。同書は、蜀漢を正統とし、劉備、諸葛孔明を評価している。逆に魏の曹操は悪い方向にバイアスが掛かっている。それでも魅力的なエピソードが多く残っているのは、桁違いの人物だということを示している。
群雄割拠の中でいち早く頭角を現した曹操は、文明の中核地の洛陽や長安を押さえた。屯田制を始め、後に租庸調と呼ばれる税体系を確立するなど超一流の政治家だった。さらに戦争にも強かったし、それだけではなく、詩作にも優れ、文化人としても超一流。まさに文武を兼ね備えていた。
おもしろいエピソードがある。官渡の戦い(200年)で袁紹を破って華北統一に大きく前進した時のこと。自分の部下が袁紹に送った手紙が大量に見つかる。手紙は、寝返り、裏切りの内容だったかもしれない。当然中身を読みたくなるところだが、曹操は全てを燃やしてしまう。それを見た部下はほっとしたと思う。自分に都合の悪い証拠を火にくべたのだから。
手紙を燃やしたのは部下を安心させるためでもあるが、自分の気持ちを穏やかにするためでもある。もし読んでしまったら部下を信じられなくなる。こういうとっさの行動ができるのは優れたリーダーの天稟(生まれつきの才能)だ。
今回の展示では、曹操の墓から出土した白磁の器「罐」が出品されている。これまで最古の白磁は隋の時代だと言われてきたが、それより前の時代にさかのぼる可能性が出てきた。
中国では大きな墓が発見されるたびに歴史が更新される。日本の宮内庁ももう少し頭を柔らかくしてほしい。箸墓古墳とかを掘れば、邪馬台国論争にも終止符が打てるかもしれない。=11月12日西日本新聞朝刊に掲載=
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