日中文化交流協定締結40周年記念
特別展「三国志」
2019/10/01(火) 〜 2020/01/05(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2019/11/27 |
来年1月5日(日)まで、福岡県太宰府市で開催中の特別展「三国志」。小説や漫画、ゲームなどにもなった「三国志」の世界は、時代を超えて多くの人に親しまれてきた。立命館アジア太平洋大(APU、大分県別府市)学長で、ライフネット生命創業者の出口治明さんもファンの一人。歴史好きで知られ、歴史関係の著作も多い出口さんに三国志の魅力、展覧会の見どころなどを聞いた。
曹操の子どもの曹丕には曹植という弟がいて兄弟2人とも詩の才能があった。この親子が漢詩隆盛の基を築いたといわれるほどだ。でも「兄弟並び立たず」で曹丕は弟を排斥する。優れた兄弟が並び立たないのは、徳川家光とその弟忠長の関係と同じ。仲良く手を携えて良い国をつくればいいのに、なかなかそうはいかない。
曹丕にはリーダーに不可欠な決断力があった。220年、東漢(後漢)の献帝から皇位を譲り受けた。西漢(前漢)を含めると約400年続いた漢室を引き継ぐのはかなり勇気がいったはず。曹操でさえできなかったことを断固として行った。劉備、孫権も続いて帝位につくことになるが、それは曹丕の決断をまねてのことだ。
中国では、王朝の交代を天帝の意思として正当化する孟子の思想があり、それを「易姓革命」と呼ぶ。そのやり方には2通りあって有徳の者に位を譲る「禅譲」と、帝位を武力で奪い取る「放伐」に分かれる。
曹丕は禅譲で帝位につくために一芝居を打っている。人々を集めて献帝にこう言わせる。「曹丕、おまえは優れているから皇帝になれ」と。でも曹丕は「とんでもございません、その器ではありません」と返し、同じことを2回繰り返して3回目にようやく引き受ける。儀式なので茶番なのだが、みんなが見ている前でやったことに意味がある。曹丕は禅譲という概念を「見える化」したのがすごい。
峻厳で謹厳実直な曹丕のイメージを揺るがすような品を本展で見ることができる。「金製獣文帯金具」は豪華な帯金具で、曹丕が欲したとされる。曹丕は薄葬令を出し、ぜいたくを否定した人物。それでもこの素晴らしい宝を欲したと考えると「曹丕も人の子だ」と親しみを覚えてしまう。=11月13日西日本新聞朝刊に掲載=
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