江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2020/04/26 |
西日本シティ銀行本店の当初設計や、増築時の設計に関わった弟子たちの胸中は複雑だ。
建築家の三浦紀之さん(77)=福岡市=は1966年に磯崎さんのアトリエに入社。数年後に受注したのが本店設計だった。設計前のある日、天神のビルの屋上から街を見渡した磯崎さんの漏らした一言が忘れられない。
「この街には色がない」
磯崎さんは日光を浴びた建物が街に放つ存在感を重視する。そこで、インドを旅した際に引かれた赤砂岩で建物を覆うことにした。数十もの素案からアイデアが固まると、三浦さんらが詳細な設計を担当した。
「磯崎さんは30代後半であれほど大きな建物を手掛けた。石で覆うことも珍しく、高度な知識と技術に裏付けられた作品」と語り、銀行本店というイメージを覆す鮮烈な赤茶に「勇気ある決断。博多に象徴性を持たせ、文化の先べんをつけた」と指摘する。
大学に入った66年からアトリエでアルバイトを始め、卒業後も14年間務めた西日本工業大客員教授の西岡弘さん(74)=同市=によると、当時磯崎さんは師匠の丹下健三さんの下、大阪万博(70年)にも携わった。「アバンギャルド(前衛)で反体制だった磯崎さんが国家プロジェクトに加わった。本店設計と同時進行で、引き裂かれるような思いだったのではないか」と推し量る。
71年の完成時、当時の福岡相互銀行(西シ銀の前身)は今より規模が小さかった。敷地全体を高いビルにすると事務所スペースが余ってしまう。当時、博多駅前では高さ50メートル級のビル建設が計画されており、見劣りしないよう高さをそろえつつ容積を抑えるため、奥行きを12メートルまで薄くした。色が強調されるように窓を小さくし、壁のような独自の建物になった。
経済が急速に発展し銀行業務が拡大、コンピューター化も進むと、本店は手狭となり83年に駅の反対側を増築。西岡さんは設計を担当した。新たに取り寄せたインド砂岩は色が微妙に異なったため、磯崎さんのアイデアで赤茶地に白いストライプを入れ、あえて表面に違いを出した。
新ビルは2025年2月ごろ完成予定。設計者などは未定で、現在より10メートル高いビルを目指す。西岡さんは「周辺のガラス張りのビルとは異なり、磯崎さんの本店は建築文化。同じようなガラス張りにはしないでほしい」と訴え、三浦さんも「経済の流れで宿命なのかもしれないが、(解体は)もったいない。現在の文化的なシンボル性を超える建物にしてもらいたい」と願っている。(藤原賢吾)=4月21日付西日本新聞朝刊に掲載=
▼西日本シティ銀行本店ビル 1971年12月に旧福岡相互銀行の本店として開業。敷地面積約5200平方㍍、地上12階、地下2階建て、延べ床面積約2万6千平方㍍。現在は西日本シティ銀行本店営業部やグループの証券会社などが入居し、ビル内には野見山暁治さんや高松次郎、ジャスパー・ジョーンズ、ヘンリー・ムーアなどの美術作品約200点が収蔵されている。
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