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絵本の世界を楽しもう!「おいでよ!絵本ミュージアム2017」【コラム】

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林 綾野
2017/08/12
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福岡アジア美術館では「NTT⻄⽇本スペシャル おいでよ!絵本ミュージアム2017」が開催中です。
2007年8⽉に福岡アジア美術館でスタートして以来、毎年夏の恒例展覧会として開かれてきた「絵本ミュージアム」は今年でいよいよ10周年を迎えます。
みんなが⼤好きな絵本の世界を美術館で体験するというこの展覧会。絵本の場⾯が⼤きく壁⼀⾯に広がっていたり、⽴体的に空間として再現されていたり、普段味わうことのできないスケールで絵本の世界を感じることができます。まさしく絵本の中に迷い込む・・・そんな感覚を味わえる展覧会です。

たちもとみちこさんの絵本から⾶び出してきたような世界が会場冒頭から広がります。

今年のテーマは「いっしょに」。まずは、ポスターやチラシビジュアルを担当された、たちもとみちこさんの『ピクニック』の世界が私たちを迎えてくれます。今回の「絵本ミュージアム」の為に、特別にたちもとさんが描いてくれたという「森」は、きれいな緑ときら星のように⼩さなお花が咲く幻想的な世界。この森をみんないっしょに歩いていけば、きっと素敵な何かに出会える!そんな予感にワクワクします。会場内は「あさ」からはじめって、ひる、ゆうぐれ、よる、よあけゾーンという流れの中でさまざまな絵本の世界が展開。その空間に⼦どもたちはみんな⽬を輝かせます。

『ピクニック』の再現コーナーは絵本を読んだり、写真を撮ったり、いつも⼤⼈気。

さっそく『ピクニック』ゾーンでは、このお話のハイライトシーン、テーブルクロスをかけてみんなのごちそうを並べた切り株のテーブルが再現されています。主⼈公のこぶたちゃんのサンドイッチとレモネードの⼊った緑⾊の⽔筒もちょこんと置いてあります。お話の中でみんなが持ってくるのは「おちゃ」ですが、こぶたちゃん持参のお⺟さん特製「レモネード」はどんな味がするのでしょうか。絵本をめくりながら⽢酸っぱい味わいを想像すると喉が乾いてくる気さえします。ホットドックやドーナツ、カップケーキやフルーツ、さらにピクニック⽤のバスケットも置いてあるので、この中にどんな⾵に⾷べ物を詰めたらいいかなあと考えると、好きなものをいっぱい作って本当にピクニックに出かけたい、そんな気持ちになってきます。

愛らしい絵と心はずむストーリーが魅力のこの絵本ですが、「食」をめぐるトキメキが全体のスパイスにもなっている気がします。 会場全体を見渡して見ると、動物や植物の姿が目に付きますが、食べ物をめぐるシーンもたくさん見かけます。
*こぶたちゃんのレモネードを思い浮かべながらレモネードを作ってみました。文末を見てみて下さい。

『11ぴきのねこ』の展⽰コーナー。満腹になってお腹が膨れた猫たちも。

例えば、とらねこ⼤将がひきいる11ぴきのねこたちの愉快な冒険物語を描いた『11ぴきのねこ』(作:⾺場のぼるさん)のコーナーでは、絵本に出てくる⿂の⾻と満腹になった猫が⽴体展⽰されています。魚を平らげ、お腹パンパン状態で舟の上にころがるネコたち。⼝を開いたまま⾻になってしまっている⿂の姿は「食べつくされた!」という感じで何とも愉快です。

『ぐるんぱのようちえん』のラストページから⾶び出してきた巨⼤ビスケット。お⽫のプールは積み⽊あそびのスペースになっています。

その他にも『ぐるんぱのようちえん』(作:⻄内ミナミさん、絵:堀内誠⼀さん)の中に出てくる特⼤ビスケットも⽴体化されていたり、絵本の中には実にさまざまな形で⾷のシーンが描かれていることを展⽰室の中にいると実感します。⽇本⼈はみんなとりわけ⾷いしん坊な気がしますが、⼤⼈だけでなく、⼦どもたちも⾷べることに関⼼が⾼いからこそ、こうした絵本がたくさん⽣まれたのではないでしょうか。

人気シリーズ「がまくんとかえるくん」コーナー。置くには、かえるくんの部屋をイメージしたライティングビューローが設置されている。

さて、大人にとって懐かしい絵本も開場にはたくさんあります。アメリカの絵本作家・アーノルド・ローベルさんの「がまくんとかえるくん」シリーズは、小学校の国語の教科書に採用されていることもあり、子ども時代に読んだことがある人は多いのではないでしょうか。その世界が展開される「がなくんとかえるくんのはらっぱ」コーナーには、可愛らしくがまくんとかえるくんの姿が再現されています。

同シリーズの『おはなし』や『おてがみ』など、ほのぼのと優しい物語の主人公である彼らは、幻想の世界の住人という感じですが、森の中にちょこんと腰掛ける姿を見ると、久しぶりに再会したような親しみが湧いてきます。子どものころは、ちょっと捉え難かったお話の世界に改めて身を置いてみると「ああ、彼らはきっとどこか不思議な森に本当に住んでいたのかもしれない…」、懐かしさと共にそんな妄想も膨らんできます。子どもたちと並んで、がまくんたちを前に椅子に腰掛けて閲覧用の絵本を読破すれば、新たな気持ちでアーノルド絵本のファンになってしまうことでしょう。

⼤⼈たちも絵本の世界に夢中になれます。

会場内の様々なコーナーには⾃由に⼿にとって読み聞かせのできる合計約1,000冊もの絵本が待っているので、⼦どもの頃、お気に⼊りだった絵本とも再会できるかもしれません。会期中は、絵本作家さんのサイン会や、⼟⽇を除いて毎⽇開催される当⽇受付のワークショップ、絵本の読み聞かせなど、参加型のイベントがいっぱいです。
いつもは「読む」絵本の世界。⾒て、歩いて、触って、体感してと、多⾓的に絵本の世界をめいっぱい感じることができる「絵本ミュージアム」。⼦どもから⼤⼈まで、みなさんぜひ「いっしょに!」楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

*簡単レモネードを作ってみました

レモネードの元のレモネードシロップ ソーダで割ってみました。

【材料】
レモン5コくらい
お砂糖約1カップ
好みでハチミツ

レモンをよく洗って輪切りにします。ガラス瓶の中に、レモン、砂糖を交互に⼊れて、最後にハチ
ミツも加えて⼀晩寝かせます。レモンから出た⽔分とトロリととけた砂糖とハチミツが混ざればレ
モンシロップが完成。⽔や炭酸⽔に溶かせばレモネードの出来上がり。(他にもレモン果汁を搾っ
て作るなど⾊々なレシピがあります。)

 

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