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「白馬のゆくえ」展みどころ③ 小林萬吾を通して日本洋画を楽しむ2

2020/07/15 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 久留米市美術館で開催されている特別展「白馬のゆくえ 小林萬吾と日本洋画50年」(~2020/8/23[日])では、洋画黎明期に学んだ小林萬吾(1868−1947)の50年におよぶ画業と、彼がめぐりあい、ともに日本洋画の歴史に名を刻んできた個性豊かな洋画家たちの名作の数々を紹介しています。本展のみどころを、久留米市美術館の方々から、数回にわたって紹介していただきます。

1回目はコチラ
2回目はコチラ

*****

 《農夫晩帰》では、農夫一人を描いた萬吾でしたが、のちに群像にも挑戦しました。それが1909(明治42)年第3回文展出品作の《渡舟》です。舟には船頭をはじめ、6人が乗り合わせています。向こう岸には、水汲みにやって来た女性も見えます。ほおかむりをしてキセルを手にするのは農夫、彼に話しかけるのは商人でしょう。肩に手ぬぐいをかけ、向こう岸に目をやるのは大工。萬吾は様々な職業の人をこの舟に乗せたのです。身を乗り出す女の子の帯をつかむ母親は、その視線を我々のほうに送っています。

小林萬吾《渡舟》1909年 香川県立ミュージアム

 さて、萬吾の《渡舟》の12年前の作品、和田英作の東京美術学校卒業制作にして第2回白馬会展出品作の《渡頭の夕暮》でもまた、川にかかわるドラマが展開されます。ここに描かれるのは、野良仕事を終えて、川辺で渡し舟を待つ農家の一家でしょう。鍬を杖代わりに立つおじいさんは疲れた様子。籠を背負った男の子は元気に舟を指さし、お母さんに話しかけているようです。お父さんは天秤棒に腰かけキセルをくわえています。

和田英作《渡頭の夕暮》1897年 東京藝術大学

 萬吾の《渡舟》と和田の《渡頭の夕暮》には、群像であること、川が画面の大半を占めていること、夕暮れの景であることなど、共通点がたくさんあります。《渡舟》の船頭のもつ竹竿は《渡頭の夕暮》の老人のもつ鍬と響き合っています。主要登場人物の数も、何と6人です。萬吾が和田の作品を参考にしたのはまちがいないでしょう。二人の師・黒田清輝が第1回白馬会展でその素描と下絵を、第3回白馬会展でその完成作を発表した大作《昔語り》も、6人の人物によって構成されていました。

 テーマは違いますが、展覧会では6人の人物が登場する作品、白瀧幾之助の《稽古》もごらんいただけます。

(久留米市美術館副館長兼学芸課長 森山秀子)

※第4回につづきます

 

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