御大典記念 特別展
よみがえる正倉院宝物
―再現模造にみる天平の技―
2021/04/20(火) 〜 2021/06/13(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2021/06/02 |
私は亡き祖母が編んだ服の編み間違いの箇所を見つけると、まるで祖母がたった今編んだように思えてうれしい。人が作ったものを見るときに作者の存在を知っていると、細部まで見るのが楽しくなると思う。
本展の「模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」は、資料や解説だけでなく、製作に携わった6人の作り手の取材動画や使った道具も展示している。現役の匠(たくみ)たちは驚くほど丁寧に取材や道具の借用に応じてくれて、私はすぐにファンになった。
取材は技法のことが中心だが、製作過程にも及んだ。全てが順調とはいかず、どれほどの匠でも不安や力不足を感じることがあったと振り返る。だけど、古代の技術に近づきたい一心で製作に向かい、学んだという。その話を聞くと、遠い存在だった彼らが急に身近に感じられた。
作り手の話を聞いた後で作品を見ると、新たに気づくことがある。
木材の一部は、1人の作り手が10年近くかけて製作できる状態になるまで管理した。内部構造を担当した別の作り手は、楽器を作るのが初めてだったという。
一発勝負で螺鈿の文様を線刻した匠は、製作時、同じ職人である父から助言を受けた。彩色の担い手は納得する色になるまで絵の具を調合し、実験を繰り返した。絃を作った職人は明治創業以来、会社に受け継がれている道具を初めて使った。
作者たちの物語とともに見る作品は、とてもいとおしい。
=(5月30日付西日本新聞朝刊に掲載)=
●特別展「よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技」
6月13日まで、太宰府市の九州国立博物館。奈良・正倉院宝物の精巧な再現模造を展示。一般1600円など。問い合わせはNTTハローダイヤル=050(5542)8600。
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