江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
秋吉真由美 2022/04/11 |
桜の木の下、見上げると桜色の空が広がる季節。アート作品でもお花見を楽しんでみてはいかがでしょうか。
福岡県久留米市出身の洋画家・髙島野十郎(1890-1975)が描いた、ゆかりの地である東京・久留米・柏で美しく咲く桜。福岡県立美術館が収蔵するこの3作品を、同館の高山百合学芸員による解説とともに紹介します。
髙島野十郎が描いた桜
丁寧な筆致で描かれた独自の写実的作風に加え、独学で絵を学び、美術団体に属さず、流行や時代の趨勢(すうせい)におもねることなく、自らの理想とする絵画を追求したストイックな生き方もまた、多くのファンに愛されている髙島野十郎。
仏教に関心を持ったことから、永遠に移ろいゆく四季の様々な表情を描くことを好みます。春の訪れを象徴する桜の花も、野十郎にとってひときわ重要なモチーフでした。
野十郎は、東京帝国大学農学部に進学するために上京して以来、東京をひとつの主な制作活動の場にしていた。《境内の桜》の舞台は、東京都世田谷区にある曹洞宗の寺院・豪徳寺であり、同寺の名樹として知られる「臥龍桜(がりゅうざくら)」が堂々たる姿で描かれている。満開の桜は花びらのひとつひとつに至るまで細やかに描かれ、妖艶なまでの美しさを放っている。そしてそれとは対照的に、砂遊びに興じる子どもたちの姿がなんとも微笑ましい。
《筑後川遠望》に描かれているのは、野十郎が生まれ育った久留米の高良大社のあたりから見た風景。前景に満開の桜が描かれ、その向こうにはなだらかな山並みと筑後平野、そしてそれを悠々と横切る筑後川が捉えられている。どこかぼんやりしているのは、春霞たなびく春の空気を写そうとしたからであろう。この場所からは、野十郎の生まれ育った生家を見渡すことができる。その頃縁遠くなってしまっていたふるさとを懐かしんだであろう野十郎のせつない心情に寄り添って、この麗しくのどかな風景を味わってみたい。
野十郎は、その晩年に千葉県柏市に移り住み、そこで彼の芸術の総決算であり、彼の作品の中でも最も良く知られている「月」の連作に取り組んだ。本作《さくら》は、柏の布施弁天に取材した作品。静寂に包まれたこの場所で、大きく枝を広げた満開の桜が春風に吹かれ、ひらひらと花びらを舞い散らしている。参拝に訪れた親子連れの少女が叩いた鐘のおごそかな音に耳を澄ませたくなる。
髙島野十郎が描いた桜、いかがでしたか。ウェブサイト「福岡県立バーチャル美術館」内の「髙島野十郎の世界」では、《境内の桜》《筑後川遠望》のほか、多くの野十郎作品を高画質・高精細画像でご覧いただけます。
また、福岡県立美術館では6月11日から9月1日まで、髙島野十郎の代表作40点を一挙に紹介するコレクション展「髙島野十郎の世界」が開催されます。こちらもお見逃しなく。
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