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郷土の美術をみる・しる・まなぶ 番外編 ARS/NATURA-「風景」の向こう側-【学芸員コラム】

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アルトネ編集部
2017/11/05
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福岡県立美術館で開催されている「郷土の美術をみる・しる・まなぶ 番外編
ARS/NATURA ―「風景」の向こう側-」展では、福岡を中心に活躍する現代美術の作家eito、古賀義浩、柴田高志、瀬戸口朗子の作品、そして福岡県立美術館のコレクションにより、自然をめぐる美術の諸相が紹介されています。本企画を担当する福岡県立美術館学芸員・藤本真帆氏に寄稿いただきました。(編集部)

eito《泥中の蓮》2017年、作家蔵

福岡県立美術館で開催中の「ARS/NATURA-「風景」の向こう側-」展では、福岡を中心に活動する作家4名の新作・旧作と福岡県立美術館が収蔵する福岡ゆかりの作品が、「自然」というテーマを軸としつつ展示されています。

騒めく木々に、揺れる水面。峻厳たる山々に、雄大なる海原、浩々たる天空。私たちをとりかこむ諸々の現象、事物を――それらをここではまとめて「自然」と呼びましょう――を「風景」あるいは「山水」などと名づけて、描き留めてきました。
展覧会タイトルの「NATURA」は「nature(自然)」の語源となるラテン語、「ARS」は「art(アート、美術)」の語源となるラテン語です。
この展覧会では、自然を表現したものとして私たちにとって最も身近な風景画や山水画などを出発点としつつ、彫刻やインスタレーション、あるいは粉本など、様々な作品・資料を通じて、自然をめぐる美術の諸相を紹介しています。

展覧会会場は、以下のキーワードのもとに6つの小セクションに分かれています。
「『景』-自然とイメージが交わるところ」、「『風景画』と『山水画』-描き留められた自然」、「『風土』-福岡と自然と美術と」、「『図譜』-自然の記述を求めて」、「『抽象』-風景の彼方、風景の深奥」、「『ARS』と『NATURA』-私が自然と向き合う術」の6つです。

ARS/NATURA展会場(中央:柴田高志《ephemera》)
「『景』-自然とイメージが交わるところ」より
柴田高志《ephemera》2017年、作家蔵 (部分)

例えば、そのうちの一つ、「『図譜』-自然の記述を求めて」においては、江戸時代の尾形家絵画資料や近代作家の素描から現代の古賀義浩の作品まで広く紹介されています。
尾形家は黒田藩に仕えた御用絵師の一族です。福岡県立美術館では尾形家に残された四千を超える粉本類(絵手本・画稿など)を絵画資料として所蔵しており、展示されているのは、そのなかの植物などが描かれた花鳥画・花卉雑画などの古画の模写、そして生写図と分類されているものです。「生写」は当時「写生」の同義語として用いられていました。「写生」という言葉自体の歴史は古いのですが、江戸時代にはそれまで以上に大きな意味を持つようになります。その背景の一つに当時の「博物学」の隆盛を受けた博物図譜への愛好の広まりがあります。この「博物学」のもつ眼差し、その背後に潜む「物それ自体にはじめて細心な視線をそそぎ、ついで視線の収集したものを、滑らかな、中性化された、忠実な語で書きうつす」(ミシェル・フーコー)在り方は、古賀義浩の作品にも通じるものです。「自然のなかにある形を取り出してみること」に興味があるのだという古賀が《遠い河 -2017-》でとりだしたのは川の水面の形です。古賀はできるかぎり人為を排除することを試み、パラフィンワックスによって川の水面を象りました。フロッタージュ[flottage]と名付けられているこの技法は、2013年よりすでに使われているものですが、今回の作品は、九州北部豪雨を経て改めて「水」を表現することに向き合うことを試みた古賀の試行錯誤の結果でもありました。

ARS/NATURA展会場
「『図譜』-自然の記述を求めて」より
古賀義浩《遠い河 -2017-》2017年、作家蔵(部分)

この他にも様々な側面からスポットをあて、幅広く作品を展示しています。多様な自然をめぐる表現の在り方からお気に入りの一点を見つけてみてください。

eito《mountain attack meeting 3》、《私は居ても不在 (mountain attack 2014より)》、いずれも作家蔵

 

※「郷土の美術をみる・しる・まなぶ」は平成21年より福岡県立美術館で開催しているシリーズ展です。

 

藤本 真帆(ふじもと・まほ)
福岡県立美術館学芸員。熊本市現代美術館学芸アシスタントを経て2012年7月より現職。「古川吉重1921~2008」(展覧会、2014年)、「紙、やどる形」(展覧会、2015年)、「ARS/NATURAー「風景」の向こう側ー」(展覧会、2017年)、「<紙>で作ろう言葉の標本箱!」(WS、2015年)、「蓮の葉ぬいぬい」(WS、2016年)などを担当。

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