至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
2018/05/19(土) 〜 2018/07/16(月)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
大迫章代 2018/01/30 |
情熱で個性的な筆致で、いまも世界中の人々を魅了してやまない天才画家フィンセント・ファン・ゴッホ。彼の人生とその死の謎が、ゴッホ自身が描いたとしか思えない「動く油絵」で全編描かれる!そんな、まったく新しいタイプのアート・ペインティング・アニメーション『ゴッホ 最期の手紙』を映画館で鑑賞してきた。
何よりも「ゴッホの名画がアニメになって動く」という映像体験に新鮮な衝撃を受ける。しかも、その衝撃の映像体験が数秒でも数分でもなく、全編96分ものあいだ続く!
「我々は自分たちの絵に語らせることしかできないのだ」とは、ゴッホが弟テオに書いた最後の手紙の書き出しの一文。だったら、ゴッホの絵に語らせようではないか、という発想から生まれたのが本作。この前代未聞の油絵アニメーションを実現するため、総勢125人もの画家たちが参加しているという。
もうひとつ驚いたのは、この作品は、まずアニメになる前に、俳優たちが実際に役を演じる実写映画として撮影されたということ。ゴッホの絵のように作り込まれた背景や、グリーンバックを前に演じた俳優たちの映像は、CGアニメーションでゴッホの絵と合成。特別なシステムでキャンバスへと投影され、長期にわたる特訓でゴッホのタッチを完璧に修得した画家たちによって油絵にされた。これには各国から選ばれた画家たちが参加し、日本からは画家の古賀陽子も参加している。
ゴッホファンならご存知の方も多いが、映画には、ゴッホが描いた名画に登場する人物たちが、その名画の背景、風景とともに登場する。絵画の中の人物が、その躍動感に満ちた筆致のまま命を吹き込まれ、スクリーンに再現されているのだ。そのキラキラと輝く太陽の日差し、ザワザワと風に揺れる草木の音、そしてゴウゴウと音を立てているように見える内面の感情が、見事にスクリーンに映し出されるさまは、なんともいえない美しさ。まるでゴッホの絵の中に入り込み、ゴッホの目を通して世界を見ているようだ。
肝心のストーリーはというと、ゴッホが謎に満ちた死に至り、この世を去った1年後から始まる。生前ゴッホと親しかった郵便配達人の父に頼まれ、青年アルマン・ルーランは、ゴッホが弟テオに宛てた手紙を配達することになる。
だが弟のテオが、ゴッホの死後まもなく後を追うように亡くなり、手紙を渡すことができなかった。アルマンは、手紙のしかるべき受取人を探して、ゴッホが最期の10週間を過ごしたオーヴェル=シュル=オワーズへと旅することになる。そこでゴッホを知るさまざまな人と出会うなかで、彼はゴッホの知られざる一面と、彼の死にまつわるいくつかの謎を知ることになる…。
ゴーギャンとの共同生活が破綻したことで精神を病み自分の、耳を切り落とした。生前はたった1枚の絵しか売れなかった。好色家、狂人、天才、怠け者、探求者…。さまざまなレッテルを貼られたゴッホの人生。一体彼はなぜ死んだのか?私たちの知らないゴッホの姿を追うミステリアスな展開にもすっかり引き込まれる作品だった。
上映中の劇場情報はこちらから。ゴッホの名品も展示する九州国立博物館「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(5/19-7/16)の前に是非。
『ゴッホ 最期の手紙』
監督・脚本:ドロタ・コビエラ 共同監督・共同脚本・製作:ヒュー・ウェルチマン
キャスト:ダグラス・ブース、ロベルト・グラチーク、エレノア・トムリンソン、ジェローム・フリン、クリス・オダウド、シアーシャ・ローナン
2017年/イギリス・ポーランド/96分 原題:LOVING VINCENT
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