九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  400年前に天正少年使節が見た欧州を追体験 杉本博司展 長崎県美術館【コラム】

400年前に天正少年使節が見た欧州を追体験 杉本博司展 長崎県美術館【コラム】

2019/01/16 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

これまで「時間」や「歴史」をテーマに、時空を行き来する視点を作品に込めてきた現代美術家の杉本博司が四百数十年前に長崎から欧州に渡った4人の少年たちに向き合った。彼らが目にしたであろう風景や建築物を撮影。豊かな階調と細部まで精密に描写したモノクローム写真群が、鑑賞者に異文化を体感した少年たちの驚きと興奮を追体験させる。

杉本博司《螺旋階段Ⅱ、ヴィラ・ファルネーゼ、カプラローラ》2016年
ⓒHiroshi Sugimoto, Courtesy of Gallery Koyanagi

16世紀後半、キリシタン大名の使節としてヨーロッパに派遣された「天正少年使節」の足跡をたどり、欧州のゆかりの地を撮影した杉本の作品などが長崎県美術館(長崎市)で展示されている。使節が1582年に出航し、8年後の1590年に帰還した長崎港を望む地に建つ会場での展覧会に、杉本も「宿命的な因縁を感じる」と語る。

作品を前に企画展への思いを語る杉本博司

新作シリーズに取り組む契機は2015年にさかのぼる。撮影で赴いたイタリアの劇場で、伊東マンショや千々石ミゲルら少年使節を歓迎する場面を描いた壁画と出合った。使節団の行程を調べてみると、少年たちが目にしていたであろう建造物の多くを、自分が撮影していたことに気付く。杉本は「呼ばれている」と縁を感じ、その後は使節の足跡を意図的に追う撮影行を繰り返すようになった。それは22歳で米国に渡った杉本自身と、少年使節を重ね合わせる旅でもあった。

展示は、長崎を出発した少年使節がスペインから地中海を渡り、イタリアに上陸したという構想で、ピサの斜塔や地中海の写真から始まる。照明を落とした展示室には、少年たちの目を驚かせたであろうローマのパンテオンやフィレンツェの大聖堂、ルネッサンスの名品「天国の扉」のレリーフなどの写真28点が浮かび上がる。

会場には杉本の作品のほか、ローマのジェズ教会が保管する3点の日本殉教図や南蛮屏風(びょうぶ)の名品も展示している。桃山~江戸時代と現代という二つの時間軸の作品が交錯することで、日本人が初めて知った西洋、西洋人が初めて知った日本という四百数十年前の双方の驚きが立体的に迫ってくる。(佐々木直樹)=1月14日 西日本新聞朝刊に掲載=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 3e02b9a75f

九州国立博物館開館20周年記念
特別展 九州の国宝 きゅーはくのたから

2025/07/05(土) 〜 2025/08/31(日)
九州国立博物館

Thumb mini db6a6cfb1c

おいでよ!夏の美術館vol.2 「オバケ?」展

2025/07/10(木) 〜 2025/08/31(日)
福岡アジア美術館

Thumb mini 3eb7508cf9

つきなみ講座8月 「みんな」って誰? ー対象から考える美術館の教育活動の変遷

2025/08/23(土)
福岡市美術館 1階 レクチャールーム

Thumb mini 98e60e097d

Hello Kitty 展
-わたしが変わるとキティも変わる-

2025/06/24(火) 〜 2025/08/31(日)
福岡市美術館

Thumb mini fe9c0b2497
終了間近

戦後80年特別企画展「戦争と、炭坑のマチ 田川」

2025/04/24(木) 〜 2025/08/24(日)
田川市石炭・歴史博物館 第2展示室

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini dbc36a40d0
コラム

【コラム】おいでよ!オバケ?展<下>人魚の伝説から生まれた精霊

Thumb mini ba9ea56751
コラム

【コラム】おいでよ!オバケ?展<上>日常に潜む不思議がいっぱい

Thumb mini 2a5d80fe6c
コラム

長崎県美術館 特別展「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載〈上〉

Thumb mini 90f6d442d8
コラム

【コラム】選りすぐりの名宝 集結 「九州の国宝 きゅーはくのたから」展 太刀、鏡、埴輪、鬼瓦…

Thumb mini a184d162c4
コラム

【コラム】九博だよ お宝集合<下>家宝になった朝鮮人参

特集記事をもっと見る