奇蹟の芸術都市バルセロナ展
ガウディ、ピカソ、ミロ、ダリ―美の巨星たちを育んだカタルーニャの煌めき
2019/04/10(水) 〜 2019/06/09(日)
10:00 〜 20:00
長崎県美術館
2019/05/23 |
バルセロナは、イベリア半島北東部にあるカタルーニャ自治州の州都。産業革命に伴い、1859年ごろから都市が計画的に拡張、近代化される。やがて工場が立ち並び、労働者家庭では子どもも低賃金で働いた。
その様子は、ジュアン・プラネッリャが描いた「織工の娘」から読み取れる。すり切れた服の少女が暗い工場で黙々と織機を操る。色白で表情に生気がない。明るく、情熱的なスペインの印象とはほど遠い。
建築需要の高まりを受け、世界遺産サグラダ・ファミリアの設計者アントニ・ガウディのような独創的な建築家が現れる。彼が手掛けた住宅建築カザ・バッリョーは奇抜な装飾の外観で知られるが、「大きな窓で光を取り込み、風通しを良くしたことで衛生的にも優れている」とカタルーニャ工科大のフェルナンド・マルサー教授は言う。この住宅の図面が本展に並ぶ。
都市の発展とともに文化は華やかさを増す。1890年代に欧州で流行した多色刷りポスターはバルセロナでも好まれた。アラグザンドラ・ダ・リケーの作品「サロン・ペダル」は繊細な草花を背景に取り入れ、優雅な雰囲気を醸す。
芸術家たちはパリに憧れ、何度も足を運んだ。その一人、サンティアゴ・ルシニョルは、ルノワールも描いた有名な舞踏場ムーラン・ド・ラ・ギャレットを画題にしている。パリの人気キャバレーの影響を受けたルシニョルやラモン・カザスは、バルセロナにカフェ「4匹の猫」を開く。
カザスの作品で注目したのが、「オッペケペー節」で有名な博多出身の演劇人、川上音二郎の肖像。1902年のバルセロナ公演の際に描かれた。遠く離れた異国の作品が並ぶ会場で、親近感を抱かせる。
4匹の猫には多くの芸術家が集い、パブロ・ピカソの初の個展会場にもなった。やがてピカソはパリへ旅立ち、20世紀初頭にパリで起きた美術の革新運動「キュビスム」を生み出す。こうした前衛美術がカタルーニャに押し寄せ、新たな文化が花開く。カタルーニャ美術館のペペ・セラ館長は「バルセロナは常に開放的で、革命的な意識もあり、変化を繰り返してきた街なのです」と語る。=5月9日 西日本新聞朝刊に掲載=
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