九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  近藤祐史 古賀義浩の2人展 「モノリスの向こう」 拡張する「彫刻」への挑戦【コラム】

近藤祐史 古賀義浩の2人展 「モノリスの向こう」 拡張する「彫刻」への挑戦【コラム】

2019/10/16 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

石や木の塊からある形を彫り出すことを彫刻の始まりとすれば、「モノリス」と呼ばれる巨岩や巨石はその原初の形と言えるだろう。近藤祐史(38)=福岡県うきは市=、古賀義浩(33)=同県久留米市=の2人展は「モノリスの向こう」と題されている。概念の拡張が続く彫刻の「向こう」へ。素材や方法に縛られず、乗り越えていく試みだ。

近藤は東京芸大院の彫刻専攻を修了。「Mud Creature」は、ソファに身を沈めた自身をモデルに粘土で原型を作り、セメントで成型した。今にも立ち、歩きだしそうな生々しさがある。頭や腕は一部が破損し、あえて不完全さを表現した。割れや崩れは自然な経年変化でもあり、長く風雨にさらされたかと錯覚させる。未来の時間を予感させ、過ぎた時間を想起させる。近藤が彫刻で提示するのは、作者と鑑賞者が同じ空間で共有する不可思議な時間体験だ。

近藤祐史「Mud Creature」


多摩美大彫刻学科出身の古賀は、コンクリート製品の表面にセメントの粉を吹き付け、霧吹きで水分を与える工程を繰り返した。粉は樹木の葉にもサンゴ礁にも見える集合体を成し、苔(こけ)むすように張り付く。作家が制御できない粒子の動きは自然の作用に委ねられ、結果、無機質なコンクリートを突き破るような有機的なエネルギーが漲(みなぎ)る。

古賀義浩「family tree(自然、人間、家族)」

「自分の手に負えないものと対峙(たいじ)する体験を提供できる」。古賀は彫刻にそう存在意義を見いだす。それは、メッセージ性や美術的価値以前の原始的な鑑賞体験へと見る者をいざなう。 (諏訪部真)=10月8日西日本新聞朝刊に掲載=

 

<展覧会情報>
会期:2019年9月24日(火)~10月26日(土) 12:00〜18:00※店休日:日・月曜日
会場:アートプロ ガラ

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini f84363516d

つきなみ講座10月
「珠玉の近代絵画─「南国」を描く。」展の見どころ紹介 ①

2025/10/18(土)
福岡市美術館 1階 レクチャールーム

Thumb mini f1026bf97a
終了間近

コレクション展 (古美術)
仙厓展

2025/08/26(火) 〜 2025/10/19(日)
福岡市美術館

Thumb mini b6f84e03a0
終了間近

特別展
古代エジプト・ ふしぎ発見!
―ナイルの贈り物と秘められた物語―

2025/09/09(火) 〜 2025/10/19(日)
下関市立美術館

Thumb mini 12669effc1
終了間近

ながさきピース文化祭2025
皇室の名品と長崎―皇居三の丸尚蔵館収蔵品展

2025/09/14(日) 〜 2025/10/19(日)
長崎県美術館

Thumb mini a822945d39

ジャネット・カーディフ《40声のモテット》

2025/10/17(金) 〜 2025/11/16(日)
長崎県美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 34971fea9d
コラム

長崎県美術館「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載(下)

Thumb mini 1afb808c84
コラム

長崎県美術館「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載(中)

Thumb mini 2a5d80fe6c
コラム

長崎県美術館 特別展「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載〈上〉

Thumb mini 90f6d442d8
コラム

【コラム】選りすぐりの名宝 集結 「九州の国宝 きゅーはくのたから」展 太刀、鏡、埴輪、鬼瓦…

Thumb mini a184d162c4
コラム

【コラム】九博だよ お宝集合<下>家宝になった朝鮮人参

特集記事をもっと見る