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詩人・最果タヒさんの九州初個展 アルティアムで開幕【インタビュー】

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秋吉真由美
2020/09/01
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 三菱地所アルティアムで開催中の詩人・最果タヒさんの九州初個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」。普遍的な言葉を紡ぎながらも、不思議な言葉の組み合わせが独特で印象付ける。そんな言葉を生む詩人、最果タヒさんに話を伺いました。

最果タヒさん

―九州で初の個展ですが、いかがですか。

 福岡は好きな街なのでうれしいです。ご飯がおいしいし、元気な街というイメージですね。今回は夏の展示なので、「福岡の夏はどんな感じかな?」ということも踏まえながら、展示の構想を膨らませました。

『詩になる直前の、アルティアムは。』

―横浜美術館で昨年、初の美術館での個展を開かれていますが、詩を展示する意味を悩んだそうで。

 詩を詩集ではないところに載せることは、ビル(商業施設「ルミネ」でのクリスマスキャンペーン)の階段だったり、今までも経験があるんです。でも、詩の展示をわざわざするということは、どういう意味だろうと思って。本で詩を読む人は、自分のタイミングで好きな時、ふとした時に読むという感じですよね。詩を所有している感じがします。一方で、展示は足を運んでやっと読める。となると、単純に言葉の展示だけだと、見に行くことに必然性がないのではないかと思いました。読み手が足を運んで、その場にいて、初めて成立するものでないといけないと感じたんです。そこで、しばらく考えて、モビールで詩を吊るすことを思いついて。これならできるかな、と話が進みました。

『詩になる直前の、アルティアムは。』

―『詩になる直前の、アルティアムは。』は、見る人によって、飛び込んでくる言葉が違う。そんな詩との出会いが楽しめる面白い空間だなと感じました。

 同じ詩でも人によって読み方、解釈が違います。展示は、作品を一方通行的に渡しているというより、読み手が作品を完成させに来てくれているような感覚です。モビールの言葉の並びは、見る人がどの言葉を面白いと思うかによって、印象に残る並びは変わっていきますし、その人がそこに行かないと、見つからない言葉の並びがあるように思います。それはとても能動的な「読書」だなと感じます。展示でなくても読書にはそうした側面があると思うのですが、この展示で能動性がよりはっきりと意識されていくように思っていて、それはとても面白いなと思っています。

『詩になる直前の、アルティアムは。』

―『いまなん詩゛?』や『詩ょ棚』も楽しい詩の展示方法ですね。

 『いまなん詩゛?』は、その瞬間で言葉の組み合わせが変わります。「この瞬間が好き」って思う時って、その人がやっぱり選びに行っている言葉なんですよね。その人だけの読書という“時間”が、はっきり見える瞬間を作品にしたいと思って作りました。『詩ょ棚』は、本屋さんで何気なく、たまたま横に並んでいる2冊が面白かったりする、そうした偶然による言葉の並びの面白さって、発見されなければ、生まれることができないんですよね。そのあり方が好きで、作品に展開したいと考えました。

『いまなん詩゛?』
『詩ょ棚』

―詩を書き始める前は、最果さんにとって、“詩”はどういう存在でしたか?

 教科書で時々読むもの、というようなイメージです。自分が書いてきたものが「詩っぽい」と指摘されて、「あ、これ詩なんだ」と気付いたので、意識的に詩を読んで、詩を書こうとして書き始めたわけではありませんでした。教科書に載っていた谷川(俊太郎)さんや(中原)中也の詩を読んではいましたが、自分が詩を書くことになるとは想像もしていなくて。ただ、距離は感じなかったです。国語の教科書を一気読みするのが好きだったので、詩や小説、評論などを区別せずに言葉全体でとらえていたように思います。

『詩になる直前の、アルティアムは。』

―創作する中で、“詩”のとらえ方が変わったりはしませんでしたか?

 自分の書いてきたものが詩だと指摘されて、「詩って何だろう」と思った時に本屋さんで出会った、吉増剛造さんの「燃える」という詩に、すごく衝撃を受けて。詩って何だろうという答えが見つかるわけではなかったのですが、それでもただただかっこいいということがわかって、それが衝撃的だった。詩がなんなのかはわからないけれど、これが詩なのはわかる、って思えて。詩がすごく好きになった瞬間でした。

『ループする詩』

―詩を書く時、念頭に置いていることは?

 同じ言葉で前向きになれましたという人もいれば、同じ言葉でネガティブになりましたという人もいるように思います。言葉は絶対的な意味を運んでいく舟ではないし、書き手が読み手をコントロールできるとはどうしても思えない。「これ、伝わらないかな…」と心配して、分かりやすい言葉にした瞬間に、その言葉は死んでしまうように思うんです。そこはとても気を付けています。なんでこう書いたのかはわからないけれど、でも書いてしまって、そしてもう覆すことができない、と感じる言葉を書くことがわたしの理想です。読み手を信用することが、書く言葉を無限にしてくれると感じます。

『詩になる直前の、アルティアムは。』

―今世界は、新型コロナウイルスで変わってしまっています。アートにも影響が出ていますが、コロナ前と後、何か考え方は変わりましたか?

 コロナによって、SNS上では共感を求める様がより強くなったと感じています。大きな問題に皆で同時に向き合っているけど、受けた影響は人それぞれのはずで。けれど、どこか問題を共有している気がして、誰にも理解されそうにない個人的な痛みや苦しさについて、なかなか発言できなくなっていると感じます。また、共感される言葉を求めるあまり、みんなが怒っていることに反射的に自分も怒ってしまって、自分自身の感情を介さないままに誰かを非難したりしてしまう、そういう怖さは感じています。わたしは、詩はそうした共感とは真逆のところにある言葉だと思っています。自分一人がその言葉に向き合って、その言葉を自分がどう思うかだけが、その瞬間、その言葉の全てとなる感覚があるからです。このタイミングで個展をすることになったのも、すごく意味があることだと感じて、前向きに準備を進められました。

 

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