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『スパイダーマン:ホームカミング』のコラボレーション・アートを手掛けた漫画家・村田雄介、マーベルの魅力を語る

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大迫章代
2017/09/15
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映画『スパイダーマン:ホームカミング』のコラボレーション・アートを、熊本県出身の漫画家、イラストレーターの村田雄介氏が手かげたことをご存知だろうか?“ダイナミックなフレーミングでキャラクターデザインも素晴らしい”と、海外メディアで大絶賛されている。「アイシールド 21」(週刊少年ジャンプ)、「ワンパンマン」(となりのヤングジャンプ)の作画家として、海外のアニメファンにもその名を知られる村田氏は、『スパイダーバース』の日本版カバーも手掛け、福岡アジア美術館で開催中の『マーベル展 時代が創造したヒーローの世界』にも記念アートを提供している。村田氏に、漫画家として観たマーベル展の魅力、そしてマーベル・ヒーローの魅力について聞いた。

『スパイダーマン:ホームカミング』のコラボレーション・アートを手掛けた
漫画家・村田雄介氏。村田氏の左手がそのアート。隣は本展覧会のための記念アート。

ー村田さんのマーベルとの出会いは?
ネットで見ると、“村田はアメコミ・フリーク”みたいに言われていますが、昔からアメコミを読んでいたわけではないんです。マーベル作品を意識して見始めたのは、サム・ライミ監督の映画『スパイダーマン』です。アシスタント時代の先輩から薦められて1作目を観て、本格的にハマったのは『スパイダーマン2』。その頃は『アイシールド 21』(週刊少年ジャンプ)というアメフト漫画を描いていて、アイシールドで自分の素性を隠してプレイするというヒーローの設定や、“自分の正体をいかに周囲にばらすか”というテーマが似ていたこともあり、すっかり夢中になりました。周りにも面白い面白いと言っていたら、知り合いの編集さんが、マーベルのスタン・リー原作の漫画トリビュート企画にアートを寄稿しないかと声をかけてくれて。大好きな『スパイダーマン2』の絵を寄稿したのがきっかけでマーベルに関連したいろんな依頼が来るようになりました。

日本版コミックのバリアント・カバー(別種表紙)として描かれた
漫画家たちのアートが並ぶ。写真右上の2点が村田氏のもの。

ー 漫画家としてマーベルから受けた影響は?
作画家は、もらった原作を絵としてブラッシュアップしていくのが仕事です。マーベル映画も基本的にはマーベル・コミックのデザインを、イメージは変えずにバージョンアップしたもの。例えば、『スパイダーマン:ホームカミング』のヴィラン(悪役)のバルチャーは、原作ではハゲワシみたいな体でオジサンの顔をしたキャラクターですが、首元のフワフワしたところをフライングジャケットのファーという解釈にして、ミリタリーチックな見せ方をしている。アレンジにひねりが効いていて面白いんです。しかも機能的で動きやすいデザインで説得力がある。そんなキャラクターのリアリティの高め方も、作画をする上で参考になりますね。また「村田の絵はアメコミっぽい」とよく言われるのですが、それはきっとデッサン力やベタの使い方のせいです。中学・高校時代に、夢中になって模写した『ストリートファイターⅡ』のキーアートや、好きな漫画家たちの影響が強く、僕が直接アメコミを読んでいたわけでないのですが、今思えば、アメコミ好きのクリエイターさんたちから、間接的な影響を受けていたのかもしれませんね。

緻密に書き込まれたマーベル・コミックの原画(会場展示より)

 

ー 『スパイダーマン:ホームカミング』コラボレーション・アートの海外での評判について
自分でもびっくりです。ポスターみたいな位置づけで出回っていますが、もともとサイトのバナーとして依頼を受け、サイズも縦長だったのですが、せっかくなら街のパノラマも描きたいと思い、あのサイズで描かせてもらいまいた。それをアメリカのプロデューサーが気に入り、ポスタービジュアルとして使ってくれたんです。光栄なことですね。

『スパイダーマン:ホームカミング』の等身大コスチュームと村田氏


ー マーベル人気は、日本の漫画にも影響を及ぼしているか?
日本でもヒーローものが流行っているのは、マーベルの影響ではないかと思います。先にちょっと触れましたが、アメコミではデッサン重視の絵が主流です。デッサン力というのは、人や物を正確に描けるかではなく、観たものをその印象のままに描ける力のこと。アメコミの絵がデッサン重視なのはアメリカが多民族国家だからで、どんな人種や民族でも理解しやすい上手さの絵が求められるからだと思います。一方、日本は国民全体が共有する文化や価値観の分母が大きいので、キャラクターやドラマに共感さえできれば、さほど絵のデッサン力は重視されない。ただ、これからは日本も多文化社会になると言われています。そうなると、漫画の内容に共感してくれる読者の間口の広さを支えてきた、日本人の共通した価値観も細分化されていき、アメリカの漫画のような誰にでも分かりやすい良さのある作品の方が共感を受けやすくなる。現在、日本でもマーベル人気が高まっているのは、そんな背景もあるのではないでしょうか。日本の漫画界というより、観る側の感性がマーベル作品を受け入れ易い方向に変化していってるのでは、という気がします。

ー マーベルで他に好きなキャラクターは?今後のマーベル・シネマティック・ユニバースMCUに期待することは?
『ファンタスティック・フォー』や最近の『アベンジャーズ』シリーズは好きでよく見ています。『アベンジャーズ』が最高だなと思うのは、互いが互いのキャラクターを際立たせるようにできていること。ハルクもキャプテン・アメリカもソーも好きだけど、みんなが一緒になって一つの色を奏でるところがいいなと思いますね。そして、ああいうことができるアメリカの文化もいいなと思います。作家ではなく、会社が権利を持つことで、作品やキャラクターの寿命が延びる。日本の方式だと、作家が亡くなるとシリーズもそこで終わり、人気のキャラが残っていきませんから。また、どんどん才能のある作家が加わっていって、時代にあったヒーロー作品が作られていくのもいいですね。MCUが毎作どう驚かせてくれるのか、純粋にファンとして楽しみです。

『アベンジャーズ』MovieNEX発売中/デジタル配信中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
TM & ©2012Marvel & Subs.

ー 最後に、村田さんの眼から見たマーベル展の見どころを教えてください。
映画で使われた衣装や小道具と、コミックの原画などを見比べられるところですね。オリジナルからどうアレンジされているのか、他では見られない劇的なビフォーアフターは、作画家としてとても参考になります。また、アイアンマンのバージョンの多さにも改めて驚きました。誰がどうみてもアイアンマンの形なのに、あれだけバリエーションが作れるとは。アレンジャーの引き出しの多さや、メカデザインのすばらしさも見どころです。

映画で使われたロキ衣装(会場展示より)
ロキのキャラクターアートやコミックの原画などを見比べられる(会場展示より)


もともと鳥山明の漫画が好きで絵を描き始めたという村田氏。「考えてみれば、鳥山先生の初期の作品もアメコミタッチで、自分の仕事がこうしてアメコミに繋がってきたのも偶然ではない気がする」と語る。また「絵にはどうしても描く側の内面が反映される、だからこそいくつになってもパワフルな絵を描けるような描き手でありたい」と作画家としての抱負も聞かせてくれた。世界が認める村田雄介氏のマーベル・コラボアートも楽しめる『マーベル展 時代が創造したヒーローの世界』は10月1日(日)まで福岡アジア美術館で好評開催中。他にも多くの漫画家たちがマーベル・ヒーローとコラボしたカバー画の数々も見どころだ。

※画像はすべて©2017 MARVEL

                                            

村田氏が作画を手掛ける最新刊「ワンパンマン 14」 (ジャンプコミックス)
 原作/ONE 漫画/村田雄介

 

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