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現代美術家・栗林隆氏の新たなパブリックアートがArtist Cafe Fukuokaに。2D、3Dを越える心象風景、2025年晩秋の記録

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アルトネ編集部
2025/12/18
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 福岡市が運営するアーティストの成長・交流拠点Artist Cafe Fukuoka(以下、ACF)の壁面に拡がる、モノトーンを基調に描かれた空と地——2025年9月末に完成した現代美術家・栗林隆氏の新作『The Path to the Revaersal site』だ。訪れる人の視線をどこか遠い彼方に引き込み、不思議な心象を与える作品について、作者の栗林隆氏に話を聞いた。

新作『The Path to the Revaersal site』の前に立つ栗林隆氏

——作品が生まれた経緯をお教えください。
栗林:2023年のFaNWeekのときに、舞鶴公園で『元気炉』と『Tanker Project』を展開しました。そういったつながりがあり、今回ACFの壁画プロジェクトを引き受けることになりました。

栗林隆+CINEMA CARAVANによる《元気炉》、《Tanker Project》2023 舞鶴公園三の丸広場
原子炉のかたちをした移動式の薬草スチームサウナ。体験した人が元気になって出てくることから命名。
現代美術大型国際展であるドクメンタ15(2022年)において13箇所で展開
CINEMA CARAVAN代表である志津野雷氏が世界を旅して切り取った記録を紡いだ映像作品《Play with the Earth》に合わせて、Play with the Orchestraが生演奏
世界中で亀裂を生むエネルギー問題。栗林氏は、タンカー一隻に地球上の生態系とありったけの「あったらいいな」を詰込み、世界を巡る構想を想い描いている。福岡・舞鶴公園では、その構想の一部を示すインスタレーションを展開

——これまでのプロジェクトでは、大きな空間を使った立体やインスタレーションで、今まで見えていなかったものやことの存在を、はっとするようなヴィジュアルで鮮やかに見せてくれる作品が印象的でした。
 今回、「壁画」ということで、これまでとは違う部分もあったように思いますが、取り組まれていかがでしたか。

栗林:ずっと平面をやろうとタイミングを伺っていて、そんな中での今回のお話しでした。壁画というのは、キャンバスに描くというのとも違って、建物の中の空間で、いわばインスタレーションにも近い。壁画をきっかけに空間をつくっていくことができるんではないかと、このカフェに来た時にまったく違う空間にもっていけるような作品にしたいというイメージがありました。
 絵の2次元と、カフェの3次元、作品には貼り込んでいる鏡が持つ次元があり、その鏡に映り込む世界がある——3つ、4つくらいの空間を作れるかな、実験的にやってみようと。

鏡に周囲の風景が写り込み、見る角度によって様々な表情をみせる
『The Path to the Reversal site』(一部)(撮影:長野聡史)

——本作を見て、栗林さんの作品で絵が描かれいる!と意外性があったのですが、学生時代は日本画を専攻されていたんですね。壁画でありながらも空間をつくるという意識で取り組まれたということですが、平面であると何が描かれているかということに意識がいきます。空や植物、画面右に描かれているのは《Tanker Project》でしょうか——栗林さんのこれまでの作品のモチーフが見られるようでもありますが、いかがでしょうか。
栗林:これまでのプロジェクトをこの中でまとめてみたんですよね。
 空といっても、これまでに旅したヒマラヤがあり、福島があり——色んな空が混ざった自分の中の、いわば抽象的な心象風景。曇り空で晴れてはいないけれど晴れそうな空。(中央に描いた)立ち枯れているカラマツは、かたちとして好きなもの——最初から鏡は入れたいと思っていたんだけれど、それも実際にやってみて、今のかたちになっていきました。
 作っていくなかで、探りながら、実験しながら、今までやってきたことを戻してゆくというイメージもありながら——絵を描くこと自体は30年以上ぶりでしたが、直感に従って描いていったという感じです。

——「実験的」「やってみる」という言葉を繰り返されていらっしゃいます。そのあたりについてもう少しお聞かせください。
栗林:今は特に、自分なりのものを探ろうとしている時期で。
 30代、40代のときは、コンセプトやテーマ考えて、もう少し言語化できるものを作ってきたのだけれど、今は説明しなきゃいけないものでないものを作りたい。これからは直感だったり、感覚的なひらめきだったり——より個人的なものを作っていく時期になるのではないかと。
 今後、どう自分らしいものが出てくるのか——この作品は、そのきっかけのひとつでもあり、そういう時期につくったものとしても自分にとって大切な作品だと思っています。

ACFのコミュニティスペースには、栗林氏が「人生をかけて実現しなくちゃいけないプロジェクト」という《Tanker Project》の設計図や模型も並ぶ
(撮影:長野聡史)

 美術大学を卒業後、ドイツで学び、現在はインドネシアと日本を往復しながら世界中でプロジェクトを展開されている栗林氏。「境界を越え、交わりを生み、様々な創造活動をおこしていく」という想いで営まれているACFという場所に、‟境界“をテーマに多彩な表現活動を行ってきたアーティストの新たな作品が生まれたこと、その空間に巻き込まれながら、思い思いの時間を過ごせることをうれしく思うとともに、ある自由と‟在り方”のようなものを示唆してもらったように思う。

2カ月の制作を経て今年の9月末に完成した作品に、新たに鏡を増やすという栗林氏。
「自分が鏡を取り付けたいんではなく、作品がそう言っている」のだそうだ

 栗林隆(くりばやし・たかし)
1968年長崎県出身。東西統合後間もない1993年よりドイツに滞在。その頃から「境界」をテーマに、ドローイング、インスタレーション、映像など多様なメディアを用いた作品を発表。2022年にドイツのカッセルで開催された『ドクメンタ15』(Cinema Caravan and Takashi Kuribayashi として参加)では、作品『out of the mosquito net (蚊帳の外)』を拠点に会期中にさまざまなイベントを行った。その際に発表した『元気炉四号基』が評価され、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。


Artist Cafe Fukuoka
〒810-0043 福岡県福岡市中央区城内2-5
開館時間:11:00~19:00
休館日 :毎週月曜日・年末年始
      ※月曜日が祝日・振替休日の場合は、その後の最初の平日が休み
公式HPはこちら

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