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近況往来/ コロナ禍もめぐる四季 色彩に 小倉織染織家・築城則子さん

2021/02/06 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
個展会場に立つ築城さん

 染織家の築城則子さん(68)が、東京・銀座の和光で8年ぶり4回目の東京個展「縞百姿(しまひゃくし) 遊びをせむとや」を開いている。7日まで。小倉織を象徴する凜(りん)とした縦縞(たてじま)に、柔らかみと遊び心を取り入れた帯や着物など約100点を並べた。

 築城さんは1952年、北九州市小倉北区生まれ。早稲田大在学中に能楽伝書「花伝書」の研究を通して華やかで静謐(せいひつ)な能装束の世界に魅せられた。中退して染織の道に入り、技術が途絶えていた小倉織を84年に復元。同市八幡東区の「遊生染織工房」で地元の草木から四季折々の色を引き出している。日本工芸会正会員として毎年新作を生み、2018年に文化庁地域文化功労者表彰を受けた。

 本展の出品作「秘空」は青磁を思わせる遠く吸い込まれるような青。クサギの実をじっくり煮出して絹糸を染め、練貫(ねりぬき)(太さが違う糸を組み合わせる技法)でゆらぎを出しつつ、格子柄を交えた余情ある着物に仕上げた。つむぎの着物「無彩卍」は四分割したモノトーンの面構成が粋で、ぐっと色味を抑えた「引き算の発想で取り組んだ」。ザクロや樫の木から抽出した繊細な光彩が幽玄の美を醸し出している。「織物という立体の中に、どう光と影を落とし込むか」を常に考えているという。

 小倉帯では、花木の営みを表現した「邂逅(かいこう)」シリーズが目を引く。「花幹邂逅」は梅や桜の花が咲く寸前の木から抽出した薄紅色と、花が散った後の木から取り出した茶色を、縦縞のグラデーションの中で出合わせた。ほかに、江戸切子作家の小川郁子さんや竹工芸作家の本田青海さんとのコラボレーションもある。

 染織は自然の精気を色で引き出す世界。今回はコロナ禍で昨春からの順延開催となり、「どんなことがあっても四季はめぐり来る。草木染をやっていると、自然の確かな力を感じます」と感慨を深めている。(平原奈央子)

=(2月5日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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