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世界に誇るホラー漫画の鬼才・伊藤潤二初の大規模展覧会が6月から福岡市科学館で開催。おぞましくも美しい世界観がひろがる。その恐怖世界に潜入!

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アルトネ編集部
2025/06/16
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人間の本能的な恐怖心や忌避感を巧みに作品に映し出しながらも、日常と非日常、ホラーとユーモアを自在に行き来する作品世界。創造性あふれる作品で国内外の読者の心をゆさぶり、全世界を熱狂の渦に巻き込んでいる漫画家・伊藤潤二初の大規模な個展「伊藤潤二展 誘惑」が福岡市中央区六本松の福岡市科学館で開催されています。


デビュー作品で映画化もされた『富江』をはじめ、『うずまき』、『死びとの恋わずらい』、『双一』シリーズ、『首吊り気球』などの自筆漫画原稿や本展のために描き下ろした新作を含むイラスト、絵画作品や造形作家・藤本圭紀氏による『富江』の新作フィギュアなどが展示されています。

富江 ©ジェイアイ/朝日新聞出版

恐怖漫画の鬼才として知られる伊藤潤二は1963年7月31日、岐阜県中津川市生まれ。「月刊ハロウィン」(朝日ソノラマ)新人漫画賞「楳図賞」の創設をきっかけに、楳図かずお氏に読んでもらいたい一念で投稿し1986年、『富江』で佳作受賞。本作がデビュー作となりました。その後も『道のない街』『首吊り気球」『双ー』シリーズ、『死びとの恋わずらい』など唯一無二の作品を発表し続けています。
世界で最も権威のある漫画賞のひとつである米国アイズナー賞にて、 2019年に『伊藤潤二傑作集10巻フランケンシュタイン』(英語版)が「最優秀コミカライズ作品賞」を受賞したのを皮切りに、2021年に2部門、2022年と立て続けに同賞を受賞し、通算4度受賞の快挙を遂げています。2023年、仏国アングレーム国際漫画祭にて「特別栄誉賞」、さらに米国サンディエゴ・コミコンでは「インクポット賞」を受賞するなど日本のみならす海外でも高い評価を得ています。

編集部は福岡市中央区六本松の福岡市科学館に潜入。その恐怖世界をご紹介いたします。

造形作家・藤本圭紀氏による『富江』の新作フィギュアが会場入り口に展示されています。

会場には多くの伊藤潤二先生のファンが来場し、熱心に作品に見入っていました。

丁寧に描きこまれた漫画原稿からは不気味で、五感をかき乱す恐怖と幻想的な美が入り混じる独特の世界観が伝わってきます。

代表作「首吊り気球」より。衝撃的でありながら奇妙な美も感じます。

長編作品で代表作のひとつ「うずまき」の漫画原稿。緻密な筆致で描かれた悪夢的な世界を写真で伝えるのはもったいない。ぜひ会場でご覧ください。

会場には作品の原画やイラストが所狭しと展示されています。

藤本圭紀氏による造形に、伊藤潤二先生が彩色を施したコラボレーション作品。手先の器用さがうかがえます。

 

世界各国で翻訳出版された書籍が展示されています。

会場には、ここでしか手に入らない200以上のオリジナルグッズが販売されています。

 

この恐怖世界を生み出した伊藤潤二先生に、お話しをうかがう貴重な機会をいただきました。

ーまず、月並みな質問ですが、今回の展覧会の見どころを教えていただけますか

伊藤:「伊藤潤二展 誘惑」は2024年、世田谷文学館(東京都)から始まった展覧会です。原画や資料などが約600点展示されていますので、これまでの漫画家人生の足跡を伝えることができると思います。墨の濃淡や修正したホワイトの跡など制作の痕跡を感じていただければと思います。

ー漫画家としては38年という長いキャリアをお持ちですが、各会場を見ても非常に若い人が目立ちます。いったい伊藤先生の作品の何が、若者の心をつかんでいるのでしょうか。

伊藤:やはりSNSの影響が大きいと思います。「ミーム」(インターネット上で拡散される画像やテキスト等のこと)という言葉がありますがインターネット上ではインパクトがある画像がより拡散されます。私の作品を若者が面白がって、ネット上で拡がっていったのだと考えています。また、いろんな方が「富江」に扮した画像が公開されていることも大きいのかなと考えています。海外で高い評価をいただいていることもネットでの拡散が大きく影響しているのではないかと考えています。

ーその「富江」が伊藤先生のデビュー作であることを考えると、本当に息の長いキャラクターですね。

伊藤:そうですね。富江を長く描いてきましたがその都度、力を入れて描いてきた結果だと思います。

-楳図かずお先生をはじめ多くの恐怖漫画家に影響を受けたとうかがっていますが、それ以外に影響を受けた画家などはいらっしゃいますか。

伊藤:H.R.ギーガー(映画「エイリアン」のクリーチャー等をデザインした画家)には影響を受けました。また、後で知った作家なのですがズジスワフ・ベクシンスキー(ポーランド出身の画家で主に死や廃墟、終焉などをモチーフに描く画家。不気味でありながら荘厳な美しさを感じさせる画風が特徴)はとても好きです。

-日常から突然ホラーに繋がる世界を数々描かれてきた伊藤先生ですが、自分でも「これは怖い」と感じたキャラクターはいますか?

伊藤:自分が生み出したキャラクターを怖いと感じたことはないですね(笑)。ただ、「悪魔の理論」という作品があります。登場人物を理論的に説得して自ら死を選ばせる悪魔(人物)を描いた作品ですが、後から読み返して「これは怖いな」と思いました。

伊藤潤二先生はとても穏やかで、誠実な方でした。高校生の時は印象派の絵も好きで、モネなどの「光」を描いた作品が好きだったとのこと。ただやはり楳図かずお先生の描く「闇」の作品世界にも一貫して魅かれ続けていたとも仰っていました。そうした「光」と「闇」、日常と地続きとなった不条理な恐怖の世界が常に揺れ動いているのが伊藤潤二作品の世界なのだと思いました。

日常と非日常、恐怖と不条理をモチーフにしながら、幻想的な美の世界が描かれた「伊藤潤二展 誘惑」は7月13日(日)まで。必見です。

(HPはこちら)

6/1(日)~7/13(日) 展覧会「伊藤潤二展 誘惑」 | 特別展・企画展 | 福岡市科学館

余談をひとつ。自作を怖いと感じたことが無いという伊藤先生が、唯一「怖い」と感じた作品「恐怖の理論」。インタビュー後、気になって早速読んでみました…。ネタバレになりますので詳細は述べませんが、「最も怖いのは人間の心」と思わせる作品でした。会場に展示されているような恐怖と美の世界とは違った作品ですが、淡々とした日常に潜む悪魔と、最後に悪魔の正体がわかった時の衝撃。たった11ページの短編ですが…怖い。

※「恐怖の理論」は本展の出品作品には含まれておりません。

 

 

 

 

 

 

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