光の芸術家 ゆるかわふうの世界 ~宇宙(そら)の記憶~
2023/06/03(土) 〜 2023/07/09(日)
09:30 〜 18:00
福岡アジア美術館
アルトネ編集部 2023/06/03 |
唯一無二のオリジナル技法「光彫り(ひかりぼり)」で注目を集める現代アーティストゆうかわふうさん。九州で初めてとなる個展「光の芸術家 ゆるかわふうの世界~宇宙(そら)の記憶~」が3日、福岡市博多区の福岡アジア美術館で開幕しました。7月9日まで。
開幕当日に開かれたゆるかわさんのギャラリートークとともに、内容を紹介します。
ゆるかわさんは1980年生まれで大阪府出身、東京藝術大学美術学部建築科卒業、同大学大学院美術研究科芸術学(美術解剖学)修了。「光彫り」は2008年ごろ、建築模型づくりで身近にあった発泡断熱材のスタイロフォームに金属ブラシや半田ごて、シンナーなどの溶剤で凹凸をつけ、背後からLED照明を当てることで誕生しました。
「ダイビングを始めたころと重なり、海をテーマに真っ青な茶室をつくったのが最初」とゆるかわさん。モチーフは主に海や空、生き物。2015年に制作を再開したころの作品という「YOU GOT WATER 01 2015年」もクジラがモチーフです。薄暗い会場の中に浮かび上がった高さ1.8m、幅5mの大作の前に立つと、まるで自分も一緒に海中にいるように感じられます。
作品の青は断熱材の色で、使っている光源はほぼ白1色だそうです。LED照明の光源の位置を上下させることで海の深さを表わしています。深海の場合は下から当て、浅瀬の場合は上から当てているそうです。
つまり、絵画のような濃淡はすべてゆるかわさんの彫りが生み出しています。白っぽい箇所はより光を透過させるため薄く削り、グラデーションをつけます。ゆるかわさんは「1回きりで修正が効かない」と制作の難しさを語ります。緻密な光の計算と精巧な彫りの技術だけで質感や奥行きが表現されていることに本当に驚かされます。
本展にはすてきな仕掛けがもう一つ。一定の時間が経つと背後のLED照明が消え、発泡断熱材そのものを見られる作品があります。金属ブラシで凸凹に削ってざらざらとした肌質を描いたり、刷毛の先に溶剤をつけて飛ばして水滴を形作ったり、ゆるかわさんの創意工夫を知ることができます。
本展は「海エリア」「羽衣伝説エリア」「空エリア」「その他」で構成され、30点ほどが展示されています。どれも色鮮やかで立体感があり、息をのむ美しさです。
その特徴はさまざまで、飼い猫をモチーフにした「光のもとで Under the Light 2018年」は、猫の毛1本1本まで繊細に描かれ、ふわふわとした感触が伝わってくるようです。
一方、タレントの藤田ニコルさんをモデルにした「天の羽衣 An angel's feather robe 2021年」は透明感のある艶やかな作品。滑らかな肌を表現するのに大変苦労されたそうで、「削ってはいったん遠く離れて確認し、また削ってという作業を繰り返した」とゆるかわさん。
多くが青色を基調とした作品の中、「約束の地へ The Promised Land 2017年」も必見。オレンジ色の断熱材が使用されており、親子象の温かみが感じられる作品です。断熱材+LED照明のさらなる可能性が広がります。
そのほかにも、福岡を題材とした新作や、それまでとは異なり断熱材の裏側から削った柔らかい印象の新シリーズなどが並びます。ゆるかわさんは「300年後に光彫りが伝統技法になっていてほしい」との思いで進化を続けています。
会場でゆるかわさんの作品を目の当たりにすると、幻想的な世界に思わず引き込まれます。なかなか平面では伝わりにくいもので、ゆるかわさんも「人の目はすごい。いいカメラでもなかなかこの作品は映せない。実際に自分の目で何を感じるかが大事」と話されていました。ぜひ、繊細な光の陰影で創られたオンリーワンの世界を体感しに会場に足を運んでください。
ゆるかわさんの制作秘話や作品への思いが聞ける「ギャラリートーク&サイン会」は4(日)10:30~11:30/14:00~15:00、24日(土)14:00~15:00、25日(日)10:30~11:30/14:00~15:00にも開かれます。貴重なお話が聞けるまたとない機会です。こちらもぜひご参加ください。詳しくはホームページで。
会場では本展の出品作を収録した作品集のほか、ポストカードやトートバックなども販売中です。
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光の芸術家 ゆるかわふうの世界 ~宇宙(そら)の記憶~
日程:6月3日(土)~7月9日(日)
場所:福岡アジア美術館(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7階)
休館:水曜日
料金:一般1,500円、高大生1,200円、小中生500円
詳細はホームページをご確認ください。
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