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平戸松浦家・藩主親子の個性際立つコレクション 記録に見るほどばしる想い、後世につなぐ‟モノ語り“ 1月20日 九州国立博物館で開幕

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アルトネ編集部
2026/01/26
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 モノを集め、守り、伝えるということ――時を越え、その原点を今一度見つめ直すような展覧会、「平戸モノ語り ─松浦静山と熈の情熱」が1月20日(火)、九州国立博物館(以下、九博)で開幕しました。
 江戸時代後期、長崎・平戸藩主の父子・松浦清(号は静山)、熈(ひろむ)の二世代に渡るコレクションを紹介する本展は、それぞれの収集にかける情熱、ふたりの対照的な性格までもが浮かび上がる、モノをして語らしめるような内容です。

9代平戸藩主・松浦静山(右)と10代平戸藩主・松浦熈(左)がお出迎え

 9代平戸藩主・松浦静山、その人とコレクションを紹介する前半、冒頭を飾るのは、齢80の静山の姿が描かれている《三勇像》です。描かれることを嫌ったという静山ですが、その肖像は眼光鋭く、力強い印象を与えます。当時の知識層、文化人と幅広い交流を持ち、旺盛な好奇心の赴くまま、美術品や洋書、鉱物や化石までとバラエティに富んだコレクションを築き、さらには、武芸にも秀でていたという静山。その人となりを彷彿とさせる肖像です。

《三勇像》内藤業昌筆、佐藤一斎賛
画:江戸時代・天保10年(1839)、賛:江戸時代・天保11年(1840)
長崎・松浦史料博物館
文化人とも多く交流したという静山。その中には老中・松平定信や、絵師の谷文晁、大阪で活躍した文化人・木村蒹葭堂らが名を連ねた
静山のコレクションには、河童や妖怪等、ユニークなものも多い
《百物語化物図》江戸時代 18~19世紀 長崎・松浦史料博物館

 そんな精力的な静山の象徴ともいえるのが、本人が著した全278巻の随筆《甲子夜話》です。江戸時代の文化を知る上で非常に重要な記録として知られるこの随筆には、当時の政治経済、外国文化、噂話や怪談までが緻密に記録されています。「戯れの事も、書き残さなければ後の世には伝わらない」と書き記した静山本人の言葉からは、正しきを記録し、伝えていく者としての強い意志が感じられます。

儒学者・林述斎より「見聞きしたことや古人の言動を子孫に伝えるべき」と勧められた静山が綴った随筆。助言を受けたその日、甲子の日の夜から書きはじめたことから命名された
《甲子夜話》松浦清著、江戸時代・嘉永6年(1853年)写 長崎・松浦史料博物館

 続く後半は、子・熈のパートです。幼少期から父の大きな期待を受け、それに沿うような結婚をし、藩主になったという熈は、静山のアグレッシブさに対し、優等生的で真面目、病気がちでもあり、父に比べ、控えめな印象を与える人物だったようです。その一方、そのコレクションや記録からは、社会不安が高まる時代において、父・静山や祖先の志を引継ぎ、松浦家の子孫や平戸を守ることに情熱を注ぐ姿が浮かび上がってきます。
 肖像画嫌いの静山に対し、熈は自分の姿を描かれるのを好んだという一面も。正しいものを残したいとの想いから書き直しを命じることもあったそうです。

会場には、様々な衣装に身を包み、ポーズを決める熈の肖像画が並ぶ

 自らの肖像画をはじめ、松浦家にまつわるものを収集し、後世に残すことを重視した熈。そのコレクションには、平戸松浦氏の始祖とされる源融、その父である嵯峨天皇の肖像や、亡き母が残した貯金で熈が作らせたという甲冑等も並んでいます。自らの祖先を天皇、さらには「神」に連なるものとして位置づけ、所有する甲冑を「神龍鎧」と名付け、平戸と松浦家を守るパワーを託す等、熈ならではの先祖意識を伺い知ることができます。

(右)《神龍鎧》江戸時代 文政6年(1823)~文政7年(1824)
(画面左)《嵯峨天皇像》住吉広尚筆 江戸時代 文政9年(1826)~文政11年(1828)
ともに長崎・松浦史料博物館

 展示の最終を飾るのは、本展の白眉、初公開となる松浦家の家宝『家世修古図』です。静山の時に制作が始まり、熈の頃に完成したと考えられる本作品には、松浦家に伝わった家宝や平戸に伝わる宝物が、克明な描写、かつ今に残る鮮やかな色彩で記されています。
 今回の展示では全10冊を初公開するとともに、そこに掲載されている松浦家の家宝を展示。150年以上の時を越え、静山と熈、ふたりが実際に見ていた色やかたちを追体験できるような魅力的なコーナーになっています。

《家世修古図》(部分)江戸時代 18~19世紀 個人蔵

 本展は、全103件の展示物のうち、その多くが初公開のもの。5年に及ぶ研究期間を経、新たに解明された展示物の数々が並ぶ、満を持しての成果展という貴重な機会です。

「収集品の箱や資料を開く度、静山や熈の書き込みに出会う調査期間は、まるで静山や熈と会話しているようでした。ふたりが残したコレクションやその記録を紹介することで、モノにまつわる人やその想い、ストーリーを伝えたい」(本展担当研究員・松浦晃佑氏)

 松浦史料博物館70周年記念、そして、九州国立博物館開館20周年のトリを飾る本特別展。文化財を収集、保存、研究し、広く私たちへ伝えてくれる博物館という場所。その場から発信される熱いメッセージは、時を経てもなお、モノを介し、人を介し、引き継がれていくのかもしれません。
 

松浦史料博物館開館70周年記念・九州国立博物館開館20周年記念特別展                     平戸モノ語り─松浦静山と熈の情熱                                          日程:2026/01/20(火) 〜 2026/03/15(日) 
時間:09:30 〜 17:00
※毎週金・土曜日は20:00まで夜間開館 ※夜間開館の実施については、九博公式サイトでご確認ください
休館日:毎週月曜日 ※2月23日(月・祝)は開館、2月24日(火)は休館
会場 :九州国立博物館(太宰府市石坂4₋7₋2)
展覧会公式HPはこちらから                                                                                             

 

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