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満開の桜に負けず劣らず人々を魅了した「福岡城まるごとミュージアム」【レポート】

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木下貴子
2018/05/07
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多聞櫓を出て北へ。福岡市民にとってはおなじみの草間彌生の《南瓜》がしだれ桜の側に展示されていた。ここは花見客でにぎわうスポットで、《南瓜》もたくさんの人に撮影されて大人気。【地図(1)】

草間彌生《南瓜》

 

バス通り沿いに建つ母里太兵衛邸長屋門では、インドのアーティスト、クルパ・マーヒジャーが作品を展示。クルパも昨年のアジ美の滞在作家で、9月から12月の滞在中に福岡城について調査を行ったうえで手掛けられた作品だ。【地図(5)】

クルパ・マーヒジャー《再訪、歴史とアイデンティティ》(部分)の展示風景。

福岡城跡で石や瓦礫を収集し、そこに今は現存していないかつての建物の写真や絵図を転写し、本に埋め込んだ「歴史の本」という形で表された。

クルパ・マーヒジャー《再訪、歴史とアイデンティティ》(部分)の展示風景

 

最後の潮見櫓の展示作家は、《ヤセ犬》や《かえっこバザール》などで知られ、また福岡では馴染み深い藤浩志だ。ここでも設営中の藤氏に話を伺うことができた。

2階建ての潮見櫓にて、1階、2階それぞれでインスタレーション作品を展開【地図(2)】。1階では全国各地の子どもたちから集められた玩具で作られた恐竜の立体《トイザウルス》をはじめ、無数の玩具によって鮮やかに床が埋め尽くされていた。圧巻である。

上記3点とも《Toys Blooming》(部分)

「僕が生まれたのは1960年で、その頃から日本は流通と消費の社会になり、プラスチックがでてきました。こんな使い捨ての消費社会は終わってほしいと、不要になった玩具を交換する《かえっこ》をスタートし、それによって集まった玩具でどうにかしようと始めたのが18年前です。その間、山ほどの玩具が集まりましたが、最近はぬいぐるみが減ってきましたね。当初はUFOキャッチャーが流行っていてそれがたくさん集まりましたが、いまUFOキャッチャーはぬいぐるみが少なくなりましたもんね。それに大手ファーストフード店のセットのおもちゃもリサイクルを始めたし。時代とともに玩具も変わりました」と藤氏。

 

同じ種類の玩具で分類し、模様を描くように無数の玩具が並べられている。「今回はM社系を中心にもってきましたが、そこから時代の傾向がわかるんです。一緒に設営した若いスタッフたちから『子どもの頃にもってた』という声も出たりして……作品を見ながら歴史を見て行っている感じですね。その中でも飛びぬけているのが、ドラえもん。継続して圧倒的に多い」。

「いまの消費社会はあと20年もしたら終焉するでしょう。1000年後の未来から見ると、この時期は『ビニプラ期』(※ビニプラ=藤が造ったビニールとプラスチックの略語)。物が捨てられていく中で、アクティビティを作ることを目的にしたプロジェクトでしたが、こんなふうに玩具自体が時代を象徴するようになってきました。なんか、ビニプラ期という時代の生き証人的な感じがします」。

繰り返し行われる《かえっこ》の過程において、運搬用の段ボールの底にたまった小さな玩具の破片の集合体《破片の大吟醸》もきれいに並べて展示してある。

2階では、ぬいぐるみを素材にした椅子や座布団、動物の形の立体が置かれている。今回の作品は展示と遊びの2つの要素があり、1階の作品は触ることはできないが、2階の作品は座ったり動かしたり自由に遊ぶことができるという。

2階にはぬいぐるみたちで作られた立体が。
椅子と座布団には実際に座ることもできる。

藤氏は「美術館でできないけどこういう場所だとできることがあります。この『福岡城まるごとミュージアム』もそうですが、その可能性を、プロジェクト管理者のような立場の人たちが、街とともに経験を積み重ねていくことが重要ではないでしょうか」とも語ってくれた。

藤氏。「30年経つと時代が変わりますが、《かえっこ》はじめて18年、ちょうど中間期のいまだいぶん時代の流れが見えてきました。いまだに、全国から何箱も集まってくるんですよ。それを少し見せたいなと。《かえっこ》の発祥した福岡でやる意味は大きいと思っています」。

藤氏の作品は、お濠にも展示されていた。

お濠に点在する作品も玩具を素材に作られたもの。

野外を舞台にどれほどのものが見られるのだろうと思っていたが、いやはや予想以上にクオリティが高く、筆者もだが、この展覧会をお目当てに訪れた多くのアートファンたちも満足だったのではないだろうか。次はいったいどこでどんなアートを見せてくれるのだろう。早くも「福岡市文化プログラム」第2弾への期待をしないではいられない。

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