九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  菊畑茂久馬さん追悼連載⑧「山本作兵衛さんのこと」【2007年コラムより】

菊畑茂久馬さん追悼連載⑧「山本作兵衛さんのこと」【2007年コラムより】

2020/07/04 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 ARTNEでは、2020年5月21日に他界された福岡市の画家、菊畑茂久馬さんを追悼し、過去、菊畑さんが西日本新聞で執筆した書評やコラムを連載します。

 

【第8回】山本作兵衛さんのこと

 暮れも押しつまって冷たい木枯しが吹く頃(ころ)になると、きまって山本作兵衛さんのことが思い出される。葬儀の日が一九八四年十二月十九日、雪のちらつく寒い日だったからだ。いつの間にか、あれからもう二十三年の歳月が流れた。
 
 小さなお寺のお堂に入りきれない人たち百人ほどは、凍えるような寒い寺の庭に、身を寄せ合うように立ったまま葬儀に参列した。ふと気がつくと、私の前に小学生が数人、身じろぎもせず最後まで直立したままでいた。作兵衛さんの人柄が偲(しの)ばれる光景であった。
 
 十四歳から坑内で働いた生粋の炭鉱夫だった作兵衛さんは、ご自分の体験をもとに筑豊炭坑の記録を絵に描き残した画家として知られている。六十歳半ばを越えて、はじめて絵筆を握った絵は九十二歳で亡くなるまで一千枚を超えた。その画集は「山本作兵衛・筑豊炭坑絵巻」(葦書房)などで紹介されている。郷土が誇る民衆絵画の金字塔である。
 
  作兵衛さんの堂々たる老年の生き方は、老いた者たちに大きな希望と勇気を与えてくれる。私も老人真只中、みなさんご一緒に元気を出して、明るく新しい年を迎えましょう。  (画家・菊畑茂久馬)

 

▼きくはた・もくま 画家。1935年、長崎市生まれ。57年-62年、前衛美術家集団「九州派」に参加。主要作品に「奴隷系図」「ルーレット」「天動説」の各シリーズ。97年に西日本文化賞、2004年に円空賞をそれぞれ受賞。「絵かきが語る近代美術」など著作も多い。2020年5月に他界。

=2007年12月16日西日本新聞朝刊に掲載=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini e794a50fea
終了間近

北九州市立美術館 開館50周年記念
「足立美術館所蔵 横山大観展」スライドトーク

2024/04/13(土) 〜 2024/05/02(木)
北九州市立美術館 本館

Thumb mini b156a79869

収蔵作品展
センス・オブ・ワンダー

2024/03/12(火) 〜 2024/05/06(月)
都城市立美術館

Thumb mini 5ac71fa77e

春の特別展「カラーズ ~自然の色のふしぎ展~」

2024/03/16(土) 〜 2024/05/06(月)
北九州市立いのちのたび博物館

Thumb mini d9d6db5602

特別企画展
オードリー・ヘプバーン 写真展

2024/03/20(水) 〜 2024/05/06(月)
鹿児島市立美術館

Thumb mini fb2248f7fb

かみよりつぐかたち -紙縒継像-
新聞紙から生まれる動物たち

2024/03/23(土) 〜 2024/05/06(月)
みやざきアートセンター

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 6a7114075c
連載記事

菊畑茂久馬さん追悼連載⑦「ゴッホの復活」【2008年書評より】

Noimage
連載記事

菊畑茂久馬さん追悼連載⑥「もう変えようがない」【2008年コラムより】

Thumb mini 6239af64bd
連載記事

菊畑茂久馬さん追悼連載⑤「謎解き 広重『江戸百』」【2007年書評より】

Noimage
連載記事

菊畑茂久馬さん追悼連載④「漱石先生大好きぞなもし」【2008年コラムより】

Thumb mini 93555d5154
連載記事

菊畑茂久馬さん追悼連載③「日本近現代美術史事典」【2007年書評より】

特集記事をもっと見る