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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 43

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山出淳也
2021/05/04
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課題は上流にある

 この数年、大分県では県が企業とクリエイターをマッチングさせ、複雑な課題を解決する取り組みが進んでいる。

 企業が何かを作る段階で、デザイナーが関わることがある。例えば商品のパッケージや印刷物など、アウトプットの部分に関わってもらうことが多いだろう。「地方ではデザインによる付加価値が必要だ」。そんなスローガンのもと起案された事業によって、生まれた製品の印刷費などに補助金を出すような取り組みが、全国の自治体で行われている。しかしその進め方では、根本的な課題の解決に至りにくい。なぜなら、作ることが目的になりやすいから。時として、解決すべき課題は経営や事業の上流にあるものだ。

 優れたデザイナーは、本質的な価値や課題を観察し、整理して、編集する一連の作業に淀(よど)みがない。なぜそうすべきなのか論理的に説明できる。特に、彼らは課題を見つけるプロセスに時間をかける。多くの企業や自治体は、何を作るのかを内部で決定した後に、それができ得る人材を探す。作るものが決まった段階でデザイナーが関われば、彼らはオペレーターとしてしか能力を発揮できない。つまり、彼らの観察力を活(い)かせない。

 僕は大分県の事業を通じて、企業の課題を見つけ、誰と繋(つな)がれば良いのかを見極めるお手伝いを始めることになった。製薬会社、不動産業、牧場、サッカーチームの運営会社など、70を超える県内の中小企業から相談が寄せられている。

 相談はたいてい、何かを作りたいからデザイナーを紹介してくれというものだ。しかし何度も問診を重ねるうちに、企業の価値向上においてそれが必要なのか疑問を感じることも少なくない。成長する企業は見直すことをためらわない。この数年で学んだことだ。

 その一環として、まるで美術館のようなホテルが別府市に先日誕生した。ここでの僕の役割は、アートの設置計画だけでなく、社長の思いを可視化すること。地域の観光をアップデートする挑戦が、ここ別府で始まっている。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(1月12日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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