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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 5

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藤浩志
2017/09/30
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土門拳のつくられた光

 山形の酒田市に土門拳記念館という美術館がある。美しい空間をつくる建築家、谷口吉生設計の美術館なので一度行きたいと思っていたが、機会がなかった。秋田の美術大学に勤めるようになって山形の酒田市まで行くことがあり、数十年越しの夢が叶(かな)って初めて訪れた。
 高校時代に出会い感動し、人生の進路を大きく変えてくれた土門拳の写真と久しぶりに向き合う。写真が持つ描写力、写真の強さを再確認する。まちと美術館と作家と作品が、とてもいい形でそこに存在している希少な美しい美術館かもしれない。
 彼の年表を読み返し、亡くなる前に脳血栓で11年間も昏睡(こんすい)状態だったことを知る。僕が鹿児島の展覧会場で出会った翌年のことだ。しみじみするなぁ。60年も70年も前のものであると思うが、妙なリアリティーを持って3Dの画像のように鮮明に圧倒的な力を持って主張してくる。古寺巡礼の撮影でも、特に光の作り方には相当な時間をかけ、色々(いろいろ)な角度からフラッシュをたき写真を作っていたことを知る。そうか。だから土門拳の写真の仏像は生きていたのだ。
 土門拳との出会いで有頂天になった高校時代の僕は京都の美術大学への進学を決めた。古寺巡礼で多くの仏像の写真が撮影されていた三十三間堂の近くの美術大学だったからだ。受験のために京都に行った時、その場に足を踏み入れて圧倒された。千体の千手観音と二十八部衆の仏像群。空間のスケールが想像を超えていた。
 ところが、妙だ。ご本体はそこにいるのだが僕が感動した土門拳の写真でみた姿、表情がそこにはいなかった。時間帯を変え、天気の状態を変え、その姿を求めて何度通ったことだろう。結局現実には存在しないのだ。写真というメディアの力と、作家の情念のようなものに圧倒されたのだ。
 (美術家。挿絵も筆者)=7月5日西日本新聞朝刊に掲載=

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