江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
藤浩志 2017/10/07 |
風景にイメージを描く
白いキャンバスに絵を描くように、目の前の風景にイメージを描きたいと思い、右往左往している。福岡県糸島市の海水浴場の海の家に暮らすようになったのも、広い海岸、海の上に僕なりのイメージを描くためだった。
絵画は鉛筆や絵の具でイメージを描くが、風景の中に描く場合はそこに何かを設置したり、仕掛けたり、人を呼んでイベントを開催したり、様々な手法がある。絵描きが画材について知識と経験を深めて絵を描くように、地域というフィールドについて深く知り、多岐にわたる手法について深める必要があった。地域は歴史も法律も風習も権利も政治も深い。多くの人が関わり複雑に変化し続ける。生涯かけてもその1%も深めしつくすことはできないだろう。だから面白い。
今日は珍しく勤務先の秋田公立美術大学を離れて、夏の始まる前の糸島の海水浴場にある自宅でコーヒーを飲みながら、穏やかな日差しの中で遊ぶ数組の家族を眺め羨(うらや)ましいと思う。「僕はここでどんなイメージを描きたかったのか?」と自問してみる。20年前に幸せな時間をつくるためにこの場所を選んで引っ越してきた。
近くの農家を借りて暮らしはじめた頃、福岡空港発の電車を指定して一番前の車両に乗って始まるツアーを企画した。筑前深江の駅に降りてもらい、そこでマップを渡し、当時の自宅まで案内した。作品の仕掛けられた家で1時間ほど過ごし、最後に夕陽(ゆうひ)の沈む時間にこの海水浴場に来てもらった。僕は海岸にバンをとめて、その後ろにカウンターを作ってコーヒーを用意し、ツアー参加者をお迎えした。
その時、家族には普通に海水浴場で遊ぶ親子を演じてもらい、海岸の少し向こうでギターを弾き唄(うた)う青年がいる風景を仕掛けた。当時はフィクションとして仕掛けた風景が20年たった今、そのまま日常の風景として目の前に広がっている。ノートの端に落書きしたイメージが数年すると目の前の風景として立ち上がってしまうのだ。このようなことはしばしばある。
(美術家。挿絵も筆者)=7月10日西日本新聞朝刊に掲載=
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