九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 18

【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 18

Thumb micro fa6a5588b3
藤浩志
2017/10/31
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

ツールとしての作品

  いろいろな現場と関わり、これまで知らないことを経験することで、予想もしなかったことが起こり、見えなかったものごとが見えはじめる。縁のなかった人との関係が深まり、新しい出会いが次の活動を導く。美術という権威的なものには懐疑的だが、何かをつくり、様々な現場で経験を重ねることには魅力を感じる。中学までは下敷きサイズの画用紙にアニメのキャラクターを描くことぐらいしかできなかったが、随分といろいろできるようになった。
 大学時代は演劇に没頭し大道具や小道具、照明や音響設備まで作っていたので、何でも作ることには自信がある。劇団を引退した後、友人と「京都情報社」という団体を作り、まちに何かを仕掛けようと話し合った。
 空間に何かを設置するには所有者や管理者の許可が必要で、いろいろ大変だということを経験したので、身に着けて持ち歩ければいいと思いつく。そこで友人が「昔からゴジラの着ぐるみが作りたかったんだ」と語り出した。別の友人が「ゴジラならモスラ対ゴジラのゴジラだな」と乗ってくる。僕はゴジラに詳しくないが面白そう。ちょうどその頃、後輩が大型ごみ置き場でウレタン(スポンジ)マットレスを拾ってきて家にあったので、そのウレタンが素材として使えるかもしれないと考えた。
 僕は自分の使い古した作業服を、ファスナーが後ろに来るように前後逆さまに着て、部屋の真ん中に立っている。ゴジラに詳しい吉川君と藤田君がマットレスをハサミで適当なサイズに切り刻みながら、ゴム用の接着剤で作業服に接着してゆく。粘土の代わりにスポンジを適当な大きさや形に切りながら貼り付けてゴジラを造形する。僕は立っているだけ。頭は発泡スチロールを削り、目はガチャ玉の透明な半円状のプラスチックに内側からリアルな眼球をペイントし、最終的にラテックスというゴム状に伸びる塗料で塗装して、かなりいい感じのゴジラの着ぐるみが完成する。(美術家。挿絵も筆者)=7月25日西日本新聞朝刊に掲載=

連載:地域と美術のすきまのやもり 一覧

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 070f2343ce

江口寿史展
EGUCHI in ASIA

2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館

Thumb mini 199fb1a74c

挂甲の武人 国宝指定50周年記念/九州国立博物館開館20周年記念/NHK放送100年/朝日新聞西部本社発刊90周年記念
特別展「はにわ」

2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館

Thumb mini e6fdc72059
終了間近

連載15周年突破記念 超!弱虫ペダル展

2024/10/31(木) 〜 2024/11/25(月)
大丸福岡天神店 本館8階催場

Thumb mini cade877eef
終了間近

小田原のどかつなぎプロジェクト2024成果展
小田原のどか 近代を彫刻/超克する
—津奈木・水俣編

2024/09/07(土) 〜 2024/11/24(日)
つなぎ美術館

Thumb mini cbbf457e32

最後の浮世絵師
月岡芳年展

2024/10/26(土) 〜 2024/12/01(日)
九州芸文館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<84> 【連載】開かれる世界 異常事態の渦中で 取り戻される日常

Thumb mini ba3135c76e
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<83> 【連載】コロナ禍の変化 国内の文化資源だけで 示唆に富んだ企画展も

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<82> 【連載】ポスト・コロナの行方 深層には恐れや執着  「夢」の推移に注目を

Thumb mini c32a1e9f35
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<81> 【連載】政府の新指針 無意識の「風景」に マスクは定着したか

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<80> 【連載】無形の「副反応」 震災の二次的被害同様 「関連死」はこれから?

特集記事をもっと見る