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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 23

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藤浩志
2017/11/11
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伝えるとつながるの違い。​

 美術大学のような教育の現場にいると、専門家ぶった大人たちが若い人の表現に対して「コンセプトは何? よく伝わらないなぁ~」とつっこんでくる。コンセプト? 概念? くそくらえだと思う。美術にコンセプトが必要なのならば、僕は美術表現などしたくない。
 そもそも、言葉にできないから言葉以外の手法での表現を模索するのだ。認識や意識化する前に衝動があり、情動があるから手足を動かし、体を動かし、描き、奏で、呻(うめ)く。何かに触れようと手を伸ばす。背伸びもする。だからコンセプトに興味はない。しかし、表現の強度や説得力には興味がある。強さと深さがあれば心が動く。それが大切だと思う。
 そしてもうひとつの大きな問題は、表現が「何かを伝えようとしている」と思われている誤解にある。もちろん何かを伝えようとしている表現があってもいい。しかし伝える前の「つながろうとする」表現のほうが力強く、大切だと思っている。
 あるとき、伝えるという概念と、つながるという概念の発生には数百万年以上の時間差があったのではないかと考えるようになった。パプアニューギニアの儀式でのリズム、刺青(いれずみ)、顔や体へのペインティングは少なくとも先祖の霊とつながるためのものだと確信する。特に文字が発生する以前の様々な表現は何かにつながろうとするものだったのではないか。
 生まれたばかりの赤ちゃんが必死に手を伸ばし、指を動かしながら泣きだす。母親とつながろうとしている行為だと思うが、そこで「あかちゃんは何を伝えたいのだろう?」などと考えてる場合ではない。学生の多くは美術につながろうと絵を描く。あるいは唄(うた)い、奏で、踊り、描く行為の多くは周辺の誰かと、もしくは遠くの誰かと、空や大地の自然と、あるいは体内の遺伝子の中に存在する先祖の記憶とつながろうとする行為なのではないか。意識化されない無意識の、あるいは意識や認識を超えた衝動の行動、活動が大切だと信じている。(美術家。挿絵も筆者)=8月1日西日本新聞朝刊に掲載=

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