江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
アルトネ編集部 2020/05/05 |
さて、二つの大水牛兜だが、大きな違いは、一方には金色の円い前立があり、他方には前立がないこと。大水牛脇立兜は、水牛の力強さにあやかりたいという願いが込められたデザインだが、前立は、どうやら黒田家の家紋「白餅」を表しているらしい(黒田家の家紋としては「藤巴」が有名だが、江戸時代には、ただ円形を描いただけの「白餅」を用いることが多かった)。当然、金色の前立ありの方が、華やかで見栄えがする。前立がないと、黒い漆塗りの兜本体ばかりが目につき、渋い…というか、地味なのだ。
二つの大水牛は、ともに長政の所用、デザインも基本的に同じなため、同時に展示することはまずない。先日、写真撮影に立ち会ったために両方を一緒に見る機会に恵まれた(博物館に勤めていても、自分の担当分野以外の資料をじっくり見る機会はそれほど多くない)。これまで気づかなかったのだが、地味な前立なしの兜の方が、脇立の角が細く、シャープな印象なのだ。担当学芸員によると、この地味な兜の方が、そのシンプルなつくりから、より古いタイプの大水牛と考えられるのだそうだ。よって、黒田長政が福島正則に贈った大水牛兜も、前立なしのタイプだったのではないか、ということらしい。
ここまで「二つの大水牛」ということで、話をすすめてきたが、黒田家にはほかにも多くの大水牛兜が存在した。福岡藩3代藩主・黒田光之所用の大ぶりな大水牛兜が伝わっているし、幕末の11代藩主・長溥、12第藩主・長知の大水牛兜もある。福岡空襲で西公園の光雲神社が被災した際に焼失した大水牛兜もあったらしい。黒田長政の家臣のうち精鋭24人を描いた「黒田二十四騎図」などには、長政を象徴するものとして大水牛兜が描かれている。
大水牛脇立兜への思い入れの強さが感じられるというものだ。ただし、ご存知のように、長政のもっとも有名な肖像画(重要文化財)は、一の谷形兜を着用している。
初代福岡藩主・黒田長政の兜にまつわるお話はいかがでしたか。
福岡市博物館の常設展には、福岡藩の時代を紹介する展示がたくさんあります。新型コロナウイルス感染症が収束し、博物館が再開しましたらぜひ足を運んでみてください。
※今回ご紹介した黒田長政所用「黒漆塗桃形大水牛脇立兜」「銀箔
福岡市博物館公式ホームページ http://museum.city.fukuoka.jp/
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