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生きる私が表すことは。 鹿児島ゆかりの現代作家展【コラム】

2021/09/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 10月16日から24日まで、鹿児島市の長島美術館で「⽣きる私が表すことは。⿅児島ゆかりの現代作家展」が開催されます。本展を企画された原田真紀さん(インディペンデント・キュレーター)より展覧会の見どころを寄稿いただきました。

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 少し先の未来をも想像しづらい今。「生きる」という言葉は、ずいぶん切実さを増したように思います。この現実をどう受け止め生きるのか、生きていくのか。作家一人ひとりがその問いに向き合い、それを展覧会として形にすることは、これからどのような世界を形づくり生きていくのかを考える一つの機会になると思いました。

 実は鹿児島で同時代性を映した現代美術作家の展覧会を見る機会は多くはありません。今秋、鹿児島市立美術館で開催される「フロム・ジ・エッジ 80年代鹿児島生まれの作家たち」展(10/1-11/7)は、同館で開催される、実に20年ぶりの現代美術企画展ともいわれています。

大人倫菜 <スーパー科学者マリーの白黒の部屋> 2020年

 ともに鹿児島のアートの現場を盛り上げようと企画した本展は、鹿児島出身、在住の作家による絵画や立体作品、インスタレーションなどで構成した展覧会です。参加作家たちは、自ら表現する場を切り拓きながら、個々の経験や時代性を映した作品を真摯に制作し続けてきました。生きることがそのまま表現することでもある彼女たちが、私たちを取り巻く複雑な時代を鮮やかに切り取り、作品を通して投げかけます。そこには、あたり前とされてきた社会の制度や仕組み、ジェンダー、鹿児島の地域性などが透けて見えるかもしれません。

 かつて別府や横浜の寿町、桜島などでアートプロジェクトに関わってきた美術作家のさめしまことえ(旧姓浦田琴恵)は、子どもがいる家庭の一大イベントである運動会を手がかりに、そこに潜むアンコンシャス・バイアスの可視化を試みます。
これまで糸を編み進めることで一時的に空間を異化させてきた平川渚(美術作家)は、目の前の現実に直に針を刺し、痕跡を残していく新たな作品に挑みます。
大人倫菜(美術作家)は少女が置かれた特殊な状況を物語化することで、現実と虚構の間を揺らし問いかけます。

さめしまことえ <みんなで箱にんげん!> 2020年

 

平川渚 <空相> 2020年

 本展タイトルは、作家たちの表現について同時代を生きる私たち自身がどう受け取り、感じたことを表すかという意味も重ねています。つまり、〈生きるあなたが表すことは?〉とう問い。そこで立ち上がった思いを発し、共有する場として、会場では作品について作家や鑑賞者同士の対話を促すような仕掛けもあります。従来の「表現する側/見る側」を越えた、意識の共有や波動を感じる新たな場となれば幸いです。

(本展企画 原田真紀/インディペンデント・キュレーター)

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