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「機動戦士Gundam GQuuuuuuX (ジークアクス)-Beginning-」が「発見」したものは何か? 「日本の巨大ロボット群像」名古屋展が始まる前に

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アルトネ編集部
2025/02/05
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現在、大評判を呼んでいる「機動戦士Gundam GQuuuuuuX 」(以下、ジークアクスという)。スタジオカラーがサンライズと初タッグを組むということで、公開前から話題を呼んでいたが、劇場公開後は「俺たちは何を見せられているのか」「この切り口できたか!」という熱狂の声が「機動戦士ガンダム」(以下、ファーストガンダム)世代からリアルタイムの世代まで、幅広い年齢層から湧き上がっている。

本作が特徴的だと感じたのは、いわゆる一部の『サブカルおじさん』では無い、ごく普通の年配層(普段は最近のアニメーション作品を見ていない層)も劇場に足を運んでいることだ。

ジークアクスの内容に触れる事はネタバレになるので限界があるが、1979年公開の「ファーストガンダム」世代の父親とその子どもたちの両方がそれぞれに本作を「面白い!」と思い、それぞれに「機動戦士Gundam GQuuuuuuX (ジークアクス)」の考察をするという構図が生まれている。それは、これまでのガンダムシリーズにはあまりなかった展開ではないだろうか。

こうした世代を超えた熱狂のコメントがネットに溢れているその大きな理由として、庵野秀明によるオリジナル「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)へのリスペクトと、自らの作品(創作物)として、ファーストガンダムの世界を再現したいという執念(執着)がジークアクスの冒頭場面に込められているからではないかと考えている。

ファーストガンダム(機動戦士ガンダム)のTV版第1話「ガンダム大地に立つ‼」をご覧になった方は、ジークアクスの映像が流れてすぐ、導入部分の数分の構図やスペースコロニーに侵入していくモビルスーツの表現、秒単位でこだわったのであろうカット割りからも、その執念・執着が伝わったのではないだろうか。

劇場版「機動戦士Gundam GQuuuuuuX (ジークアクス)-Beginning」を見て、あらためて感じたことは、やはりファーストガンダム第一話「ガンダム大地に立つ‼」の際立った完成度と映像表現の革新性だ。約50年の年月を経ても、やはりその映像は素晴らしく、その魅力は失われていない。瞬間の描線の美しさや複雑な構図はジークアクスの方が緻密に描かれている。モビルスーツの細部表現はさすがスタジオカラー制作だと思わされる。一方で、スペースコロニーに侵入するモビルスーツが居住空間に降り立ち周囲を窺う場面の、無重力空間から重力があるエリアへの移動表現にリアリティを「感じさせる」のは、ファーストガンダムの映像ではないかと思わされた。

誤解してほしくないが、この二つの作品の優劣を論じたいわけではない。両作品とも、映像はとても素晴らしい。そして、その素晴らしさの違いが両作品を見れば世代を超えて共有することができるという事だ。

ファーストガンダムは彩色されたセル画と背景を組み合わせ、一コマ単位で撮影するという、シンブルかつアナログな手法で作成されている。しかし、その映像は時間の風雪に耐え、いまなお説得力を持った映像作品として存在していることがわかる。

 

「日本の巨大ロボット群像」会場(写真は福岡市美術館)

日本のアニメーションデザインの変遷を「巨大ロボット」という切り口で紹介する「日本の巨大ロボット群像」が2月15日(土)から、名古屋の金山南ビル美術館棟で開催される。会場にはファーストガンダムが日本のアニメーションデザインに与えた影響を考察するコーナーが準備されているが、その中には第1話「ガンダム大地に立つ‼」の第1話の映像表現を構造分析した展示がある。この展示を見れば、なぜ庵野秀明氏がジークアクスの冒頭の表現(再現)にあれほど執着したのか、その魅力の要因が理解できると思う。

ファーストガンダム第1話の演出表現をわかりやすく展示したコーナー(写真は福岡市美術館)
 

会期中には第1話の上映会も予定されている。ジークアクスを見た人はぜひ「日本の巨大ロボット群像」会場で本コラムが伝えたいことを感じていただきたいし、本展に興味がある人は、ぜひ展覧会を鑑賞後、ジークアクスを見ていただきたい。

どんな芸術も(アニメーションも絵画もインスタレーションも)、過ぎていく時間の中で少しづつ評価が忘れられ、埋もれていく。そして後世の批評家や時代の眼によって、その価値が再度「発見」され、その素晴らしさが多くの人々に「普遍化」されていくのだと思う。

脈々と続くガンダムシリーズの源流という評価ではなく、映像そのものの「機動戦士ガンダム」の革新性とその魅力を2025年に大きく再発見したこと、その事もジークアクスが達成した、一つの成果である。

◇◇

日本の巨大ロボット群像

日 程: 2025年2月15日(土)~3月24日(月) ※休館日なし

会 場:金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)

愛知県名古屋市中区金山町1-1-1 金山南ビル内

日本の巨大ロボット群像 愛知 - 名古屋テレビ【メ~テレ】

開催概要 | GIANT ROBOTS 日本の巨大ロボット群像

 

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