
民藝 MINGEI-美は暮らしのなかにある
2025/02/08(土) 〜 2025/04/06(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
2025/03/04 |
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美しく実用的な生活道具「民藝」(民衆的工芸品)を紹介する展覧会「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」が、福岡市早良区の市博物館で開かれている。器や手ぼうき、家具など国内外から集めた約150件の民藝品を通して、その魅力に触れてみた。
(文・鶴智雄、写真・佐藤桂一)
会場に並ぶ民藝品は、時を超えて異彩を放っていた。
例えば、よろいの下に着用したとされる江戸時代の刺し子の稽古着。藍色の木綿に薄茶色の糸で描かれた幾何学模様が、立体的に浮かび上がって見える。手間のかかる手法で縫い上げたことで、耐久性と美しさを実現したという。
江戸時代のろうそく台も圧巻。緩やかな曲線を描いた持ち手の造形が秀逸で、火をともしながら移動できる。芯を切るはさみやごみ箱も備え、展示解説で「用の美を視覚化した」と称賛される逸品だ。
1926年、思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)らが民藝運動を提唱し、庶民が日常で使う生活道具にこそ「美」が宿ると説いた。1世紀を経た今でも柳の思想や審美眼は共感を呼び、民藝ブームと呼ばれるほど、再び注目を集めている。
会場では、民藝品に囲まれた暮らしを想像しながら鑑賞するのも楽しい。
柳が41年に手がけた「生活展」の再現コーナーでは、部屋の中央に味わい深い大きなテーブルと椅子が置かれ、周囲に火鉢や食器棚、長卓といった家具を配置。80年以上前とは思えないモダンさを感じさせる。現代のライフスタイルに合わせた居室の展示では、久留米絣(がすり)のタペストリーや器などをインテリアに用い、洗練された空間に昇華している。
また、小鹿田(おんた)焼(大分)など国内五つの民藝の産地に焦点を当てたコーナーでは、過去と現代の製品を展示し、伝統を受け継いだ職人の思いや制作風景を映像で紹介している。
同館学芸員の石井和帆(かずほ)さん(33)は「生活に根差した民藝の名品を実際に見て、暮らしを豊かにするヒントを見つけてみては」と話す。安価で手軽な工業製品があふれる時代だからこそ、職人の丁寧な手仕事や温かみのある手触りの良さが見直されている。豊かで彩りのある生活とは何か、ぜひ会場で探してみてほしい。
▼民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある 4月6日まで、福岡市博物館。西日本新聞社など主催。観覧料は一般1600円、高大生1200円、小中生800円、未就学児無料。月曜休館。東映=092(532)1081。
=(3月1日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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