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浮世絵師の筆の冴え! 肉筆浮世絵―師宣・春章・北斎たちの筆くらべ  出光美術館(門司)

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アルトネ編集部
2025/04/25
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4月12日(土)から出光美術館(門司)で開催中の「肉筆浮世絵-師宣・春章・北斎たちの筆くらべ」。名だたる浮世絵師による肉筆浮世絵の名品が展示されている。本展の見どころを立畠敦子・主任学芸員に見どころを寄稿いただいた。

現在、出光美術館(門司)では「肉筆浮世絵-師宣・春章・北斎たちの筆くらべ」展を開催しています。浮世絵といえば一般的には版画がよく知られますが、江戸時代を通じて、ほとんど全ての浮世絵師は版画の下絵だけでなく、完成までの作業を自らが描いた肉筆画の制作に旺盛な筆をふるいました。版画は数多く刷ることができるのに対し、肉筆浮世絵は、浮世絵師がすべて描いた一点物です。
また浮世絵とは「浮世」つまり当世の風俗(流行)を描いたもので、江戸時代に花開いた新しいジャンルであり、江戸時代を代表する文化の一つとなりました。現在は世界的にもその美しさが知られるものとなっています。
現在NHKで放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、主人公となる蔦屋重三郎とそれを取り巻く吉原の人々や浮世絵師、戯作者などとの人間関係が生き生きと描かれています。肉筆浮世絵はまだ登場していないようですが、版画の役者絵や美人画、そして青本などの戯作本などの書物など当時の出版の状況を知ることができます。なかでも礒田湖龍斎(生没年不詳)や北尾重政(1739-1820)そして、今展でもポスターに使用した「桜下三美人図」を描いた勝川春章(1743-1793)などの浮世絵師が実際に登場し、「当世のようすを描いた浮世絵」が制作される背景までドラマのストーリーに取り込まれています。
この「桜下三美人図」を描いた勝川春章は、江戸時代中期を代表する浮世絵師で、役者絵と美人画を得意としたことで、当時人気を博していた浮世絵師です。ドラマでは、『青楼美人合姿鏡 (せいろうびじんあわせすがたかがみ) 』(北尾重政と合筆)の下絵を描き、これは、花魁瀬川を描いた唯一のものとして、劇中において重要な役割を果たしています。さらに春章は肉筆の美人画でも細密優美な作風で高い評価を得ており、「桜下三美人図」はそうした春章の画技を十分に感じることができます。

桜下三美人図 勝川春章 江戸時代(18世紀)
出光美術館蔵


今を盛りに咲く桜の下に佇む三人の女性は、その構図も完璧で、扇を持つ女性や、少し首をかしげる女性、後ろ向きの女性それぞれの所作、そして目鼻など顔貌も美しく見るものを惹きつけます。また着ている着物から、振り袖の女性は年若く、扇を持つ女性は妙齢の、背中を向ける女性の黒く地味な着物は年増の女性ではないかと考えられ、おひな様の三人官女のイメージが投影されているようです。さらにくねくねと流れる小川は、曲水の宴(小川の上流から流れてくる杯が自分の前を通り過ぎる前に、詩歌を詠じるという宮中行事)を連想させるなど、いにしえの雅な王朝文化を感じさせます。花見に興じる庶民を描いた「桜下三美人図」ですが、三人の女性の姿と背景に描かれた景色に、王朝文化への憧れを巧みに描き込んだものと言えるでしょう。

出光美術館(門司)主任学芸員 立畠敦子

開館25周年記念 肉筆浮世絵 ―師宣・春章・北斎たちの筆くらべ
日 時:2025年4月12日(土)~2025年5月25日(日)                    
    午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
会 場:出光美術館(門司)(北九州市門司区東港町 2-3)                                 休館日:月曜休館(5月5日は開館) 
入場料:一般700円、高大生500円
    ※中学生以下は無料(ただし保護者の同伴が必要)
主 催:出光佐三記念美術館、出光美術館、西日本新聞社
問い合わせ:TEL 093-332-0251

公式HPはこちら

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