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マカオを愛し、世界を旅する孤高のコスモポリタン/シーズン・ラオさんに聞く【インタビュー】

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西山 健太郎
2018/07/11
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――ラオさんは世界各国のアートフェアに作品を出展されていますが、国によって違いはありますか?

ラオ 最近では、世界中で様々なアートフェアが行なわれています。アートフェアは商業的な側面に加えて、キュレーションやアート教育などを含めた多面的な役割を果たしています。そのようにアートフェアが可能性が広くて奥が深いものだということまで知っている人はそう多くありません。自分が作家の立場で強く感じるのは、これからのアートシーンはアートフェアを抜きにして捉えることができないということです。通常アートフェアは、ギャラリストが扱っている作家の作品を出展します。つまり、全ての作品がギャラリー経由です。そうした経緯で私の作品は東京、福岡、札幌、台北、ソウル、大邱、釜山、ニューヨーク、香港、ミラノ、シンガポール等のアートフェアに出展されてきました。もちろん、全てのフェアに足を運ぶのは無理なのですが、キュレーターやギャラリストから推薦していただけることで、私自身刺激を受けながら成長でき、大変ありがたいことだと感じています。

2016 Nov – Air fair – Daegu, Korea

ラオ 中には特別なキュレーションの形もあります。
自分が関わった韓国の大型アートフェアのひとつに「大邱アートフェア」があります。大邱は歴史的にも日本との影響があり、アートフェアでは特別キュレーションセクションを設けて、日本と韓国のキュレーターから毎年数名の作家を推薦しています。私は2014年と2016年に推薦をいただき、参加しました。ギャラリー名ではなくて作家名で出展できるので、メディアにも注目され、良い交流もできました。実際に私もソウルでの個展が増えて、韓国の重要なアート雑誌「美術世界」に個展のレビューを書いていただきました。韓国の方に広く私の作品を伝える良い機会になりました。
去年シンガポールで開催された「Asia Contemporary Art Show -  Singapore Contemporary」は、こちらも100軒以上のギャラリーのブースがあり、そのほかにフランス人の学芸員とアートフェアが一緒に企画したキュレーションコーナーもありました。こちらでも私はギャラリーからの出展ではなく、推薦作家として作品を展示しました。アートフェアが終わってから、作品を気に入ってくれたシンガポールのキュレーターが、ギルマン・バラックスにある2017年のヴェネツィア・ビエンナーレ・シンガポール館の制作アトリエまで案内してくださり、その時にザイ・クーニンさんにも会うことができました。
今年はヨーロッパで二番目に大きいと言われる写真アートフェア「MIA PHOTO」へ、シンガポールのアートフェア主催者から招待を受け、出展しました。このように、アートフェアは色々な国の方に作品を見てもらう絶好な機会であり、作家としての活動の場を広げていく足掛かりとなる場なのです。
こうした経験から、自分が感じるのは、作家は、世界に視野を向けていくことが大切だということです。去年の札幌アートフェアでも、主催者から私の経験を聞かせて欲しいとの依頼を受け、トークイベントをさせていただきました。

――作品の展示だけでなく様々なアート活動を手がけていらっしゃいますね。

ラオ 最近、特別な意味を持つ場所とコラボしたワークショップも行っています。人それぞれ、その場所を深く理解して、感性を発揮しているかどうかで、発展の可能性も大きく違います。このワークショップでは、撮影だけでなく、現地のアイデンティティーや縁のある人たちに現代アートの考え方、見方、写真の可能性と表現の仕方などを話し、皆がその特定な場所を撮影して、展示と、後々までのサポートを行っており、参加者の中にはシリーズ作品を作り続けている方もいます。例えば去年、町おこしと古い建造物の存続に関心のある大阪港の方達からの招待で、旧商船三井築港ビルという歴史的な建物でワークショップを開催しました。今年は北海道の伊達市にある7000年前の縄文時代の貝塚遺跡で、博物館と考古学学芸員の方とコラボします。縄文人にとって「人間も自然の一部である」ということは明白な事実でした。私が常々思っている「アートには自分でも読めない計り知れない力がある」ことを知ってもらい、体感してもらうことで、そこに住む人たちが土地の歴史に出会う良いきっかけになると思っています。

トークショーには多くの観客が訪れた

――ラオさんは「日本とマカオの文化の架け橋」となる活動にも力を入れていらっしゃいます。

ラオ ​大航海時代にはキリスト教文化を通してマカオと長崎は密接なつながりを持っていましたが、残念ながら現在、そのつながりはほとんど残っていません。私は芸術だけではなく、時おり文化交流の活動についても考えます。例えば、第67回「さっぽろ雪まつり」ではマカオ聖ポール天主堂跡14メートル大の雪像のコラボ作品展を制作し、テレビの特集番組など、メディアに出演しました。その他には北海道の蔦屋書店でのマカオ映画上映会や、東京アーツ千代田3331におけるマカオの作家たちによる展示を企画開催しました。
また、マカオに関するものを日本に紹介するだけにとどまらず、日本とアジアの若い表現者たちが大阪に集結して開催される《UNKNOWN ASIA》フェアでは、審査員を務めさせていただいています。そこで、「Season Lao賞」を設け、受賞者対してマカオでの企画展開催をサポートしています。現代アートに限らない、様々な視線と観点を知ることができ、大変刺激になり有意義な機会です。

Season Lao exhibition 
Gallery MORYTA
(2018)


――今年で4回目の開催となる「アートフェアアジア福岡」についてはご存知ですか?

ラオ ​もちろんです。私と福岡の縁ができたきっかけはアートフェアアジア福岡に作品を出展したことで、そのときのことはとても印象に残っています。福岡の人々はアートに熱心で、文化度も高いと感じますし、アートマーケットの広がりも感じます。福岡アジア美術館や福岡市美術館といった公立美術館や行政の支援のもとで、ギャラリスト、アーティスト、コレクター、運営スタッフ、そして観客が一体となって盛り上がっており、世界中のアートフェアを回っていますが、その熱量は他に例を見ないものです。アートフェアアジア福岡は日本だけではなく、海外のギャラリストの間でも話題になっています。今年のアートフェアアジア福岡には、自分の作品を預かってもらっている韓国のギャラリーも出展することになっており、「アートは軽く国境を越える」ことを実感しています。

――ラオさんはこの福岡の町についてどういった印象をお持ちでしょうか?

ラオ ​福岡にはまだ数回しか訪れたことはなく、観光客としての第一印象は、とても過ごしやすい場所だということですね。暮らしている人たちがとにかく温和で人懐っこい。長きにわたり東アジアの国や地域と交易を行ってきて、ヒトやモノの交流拠点であり続けてきた歴史がそういう土壌をつくっているのだと思います。また、私の作品を数多くコレクションしてくれる方々が世界中にいるのですが、その中でも福岡の方々は特に熱心で、中高年のアートコレクターだけでなく、若い世代も目立ちます。本質的な意味で作品に向き合い、感動し、作品と会話してくださる。そして、私の作品が初めてのコレクションだという方もいらっしゃって、とてもありがたいと思っています。私が作品を通して伝えたいのは、縁あって訪れた場所、その場所の過去から現在までの息遣いや気配です。その本質を作品を理解していただける方々がこの場所にはたくさんいらっしゃいます。福岡は、コレクター、ギャラリスト、そして芸術家が一緒に成長できそうな町です。今後もこの町と良い縁を結んでいけると確信しています。

――最後に、ラオさんの今後の抱負を教えてください。

ラオ ​人間が選ぶことのできないことは、生まれる場所と時間です。自分にとって、作家の道はこの空間と時間に落とし込まれた意味を探すこと。人生を使って色々な縁と、行動する能力を備えて、自分の中にある何かを開示する機会が与えられている。そんなふうに考えています。
芸術が良いきっかけになること、例えば作品を通じて人と自然の関わり方を継続的に反映できたら嬉しいです。また、生まれ育った場所であるマカオは土地の歴史や文化に関する文献が少ないので、私の作品が「現在(いま)」という時代を後世に伝える資料となりうるかもしれない。そのような可能性に思いを馳せています。

――世界を舞台に活躍するラオさんの今後に注目しています。本日はありがとうございました。

話し手・作品写真提供:シーズン・ラオ(www.season-lao.com
聞き手・編集:西山健太郎(福博ツナグ文藝社)
会場写真提供:安東佳介

 

アジアのアートに触れる機会として、「アートフェアアジア福岡2018」が今年も開催予定。韓国、香港、台湾、シンガポールなど海外からの参加も含めた37のアートギャラリーがホテルオークラ福岡9階フロアに集結します。シーズン・ラオさんのインタビューを読んでアートフェアに興味が沸いた方は、是非チェックしてみてください。(編集部)

アートフェアアジア福岡2018/ART FAIR ASIA FUKUOKA 2018
会期:2018年9月8日 (土) 11:00~19:00
   2018年9月9日(日) 11:00~18:00
会場:ホテルオークラ福岡 9階フロア(福岡市博多区下川端町3−2)
入場料:1日券:1500円/2日間通し券:2500円
※2日間通し券は「チケットぴあ」のみ取り扱い(Pコード:769-138)
公式HPサイト:http://www.artfair.asia/
お問い合わせ先:アートフェアアジア実行委員会事務局
TEL::092-716-1032 E-mail:info@artfair.asia

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