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“見えない世界遺産” 「三重津海軍所跡」の魅力を発信。レゴブロックで日本初の実用蒸気船「凌風丸」を再現!【インタビュー】

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大迫章代
2018/12/26
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巨大レゴブロックで作られた全長5メートルの「凌風丸」

 

“見えない世界遺産”として話題の「三重津海軍所跡」をご存知だろうか?2015年7月、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつとして世界遺産にも登録された佐賀県にある世界遺産だ。保存のため埋め戻されているこの「三重津海軍所跡」に、レゴブロックで作られた巨大「凌風丸」が登場。これは、幕末維新期に日本の科学技術を牽引した「三重津海軍所」の存在と意義を、未来を担う子どもたちに知ってもらおうと企画された『#みえつではじめて』プロジェクトの第1弾(12月9日に開催された巨大レゴブロック「凌風丸」初上陸イベントのレポートはこちら)だ。このプロジェクトの仕掛け人である、佐賀県「肥前さが幕末維新博」事務局長 脇山行人氏と佐野常民記念館長 諸田謙次郎氏、そしてブロックビルダー 森田竜也氏に話を聞いた。

 

まずは、「肥前さが幕末維新博」事務局長脇山行人氏にプロジェクトの意図と、「凌風丸」について聞いた。

佐賀県 肥前さが幕末維新博事務局長・脇山行人氏

 

 

Q 「凌風丸」とはどんな船ですか?

脇山「1865年に『三重津海軍所』で建造された日本初の実用蒸気船です。『三重津海軍所』は、当時、他藩に先駆けて取り入れた西洋の技術を用いて、様式船の製造・修理を行っていた施設でした。この“実用”というのがミソ。『凌風丸』以前に、他藩でも蒸気船が造られましたが、スピードも機能も、実用レベルではなかったと言われています。その点、『凌風丸』は、藩主が近場を巡る”御座船(ござぶね)”として実際に使われていました。」

Q なぜ「凌風丸」をレゴブロックで再現しようと思ったのでしょう。

後方から見た巨大レゴブロックの「凌風丸」

 

脇山「幕末維新期の佐賀藩の科学技術が集結していた『三重津海軍所』を、より多くの方に、なかでも未来を担う子どもたちに興味を知ってほしい、というのが発想の原点でした。レゴブロックは、子どもをはじめ、幅広い年齢の方々に興味をもってもらうのに最適なツールだと思ったのです。プロジェクトでは、『三重津海軍所跡』に隣接する『佐野常民記念館』でのこの巨大レゴブロックの『凌風丸』展示に加え、50ピースのレゴブロックで「ミニ凌風丸」を作るワークショップも開催します(~2/24(日)までの日曜日 ※12/30(日)を除く)。こちらは東京工業大学レゴ同好会監修の特製キットを使って行う親子向けの無料参加イベントです。(中学生以下対象)
プロジェクト第2弾では三重津のドライ“ドック”とあひるの“ダック”をかけて、『みえつdeダックレース』と題したイベントも行います。こちらは、ラバーダック“みえつダック”に、オリジナルデザインを施した自分だけのダックで参加していただくレースです。ぜひ、プロジェクトを通して、楽しみながら『凌風丸』と『三重津海軍所跡』に興味を持ってもらいたいですね。」

『#みえつではじめて』プロジェクト第2弾の「みえつダックde レース」(2019年3/3(日)開催)のデザインも受付中

 

次に、佐野常民記念館長 諸田謙次郎氏に、巨大レゴブロック「凌風丸」が、館内に展示される意義について聞いた。

佐野常民記念館長 諸田謙次郎氏

諸田「『凌風丸』は、これまで絵図やみえつドームシアター(※)の映像でしか見ることができませんでした。153年前に造られた船が、1/3ほどのサイズで再現され、実際に形として見ることができる点に大きな意義を感じます。『凌風丸』は、藩主を乗せる”御座船”だったため、ガラス張りの船室があったと言われています。レゴブロックとはいえ、色づかいといい、デザインといい、学術調査をもとに「こうだったであろう」と思われるイメージが忠実に再現されているのに驚きます。」

 

最後に、この巨大レゴブロック「凌風丸」の制作者ブロックビルダー 森田竜也氏に制作の裏話を聞くことができた。

 ブロックビルダー 森田竜也氏

 

Q レゴブロックで再現された「凌風丸」の大きさは全長5メートル、約7万ピースのレゴブロックを作っているそうですが、まず何から作り始めたのですか?

森田「実際の設計図などは残されていないということで、いただいた資料をもとに、『レゴデジタルデザイナー』というソフトで、設計図を作ることから始めました。ソフトで、ざっくりとしたイメージを作り、そこから必要なパーツと数を割り出して、材料を注文することから始まりました。レゴはデンマークの会社なので、これだけ大量なレゴブロックを使うとなると、ヨーロッパから取り寄せねばならないのです。」

Q 近くで見ると、レゴブロックの種類の多さにも驚きますが、何種類くらいのピースを使っているのでしょう。

森田「それは、数えてないですね(笑)。例えば、この円型文様は、三角形のピースを複数組み合わせて作っているのですが、三角形のブロック1つとっても、角度違いや大きさ違いで、数えられないほどのピースがあります。ブロックだけでなく、プレートというパーツも複数重ねて、ちょうど厚みが合うように計算して…。最初にコンピューターで設計図は作りますが、実際はやりながら調整していくことがほとんどです。」

形も厚みも実にさまざまなパーツの組み合わせでできている円型の文様部分

 

Q「凌風丸」作りで一番苦労した点は?

森田「そうですね…正直に言うと、納期ですかね(笑)。制作期間は3か月ほどだったのですが、この規模のものを作るには、時間が足りなくて。それからこの大きさになると強度も必要になってくるので、強度を保てるブロックの組み合わせにも気を使いました。」

Q 最後に、アート好きなアルトネ読者にメッセージをお願いします。

森田「レゴブロックの面白さは、やりながら感覚でつくり上げていけるところです。ドット絵感覚でいろんなものを表現できるので、レゴブロックをアートの素材として使うアーティストも多くなっているのではないでしょうか。イメージに合わなければ、何度でもばらして組立て直せる、そういう“トライ&エラー”的な部分と、親しみやすさがレゴブロックの最大の魅力だと思います。「凌風丸」もレゴブロックでできる表現の可能性として、ぜひ見に来てもらいたいですね。」

森田竜也氏は、国内最大規模のレゴユーザーグループSakuraの副代表も務めるブロックビルダー。2016年からインターネット上で作品掲載をはじめ、その作品発表数は2018年11月現在で100点にも上る。レゴブロック作品コンテストでも数々の授賞歴を誇る。

 

※「みえつドームシアター」は、「三重津海軍所跡」に隣接する「佐野常民記念館」内にある直径6メートルのシアター。「三重津海軍所」創設に至る幕末佐賀藩のストーリーを、迫力満点の映像で見ることができる。

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