江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
大迫章代 2018/12/18 |
明治維新150年を契機に、「佐賀の偉業や偉人を顕彰し、その志を活かして、未来につないでいこう」と「肥前さが幕末維新博覧会」(2019年1月14日(月・祝)まで)を実施中の佐賀県。幕末維新期の佐賀藩の科学技術が集結していたのが、他藩に先駆けて取り入れた西洋の技術を用いて、様式船の製造・修理を行っていた施設「三重津海軍所」だった。2015年7月、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつとして世界遺産にも登録された「三重津海軍所跡」。だが、海軍所が稼働していた当時の遺構は、現在保存のため埋め戻されている。そのため、“見えない世界遺産”として話題の「三重津海軍所跡」をより知ってもらうべく、12月より始動したのが『#みえつではじめて』プロジェクトだ。この第1弾、巨大レゴブロック「凌風丸」初上陸イベントに参加してきた。
「凌風丸」とは、1865年に「三重津海軍所」で建造された日本初の実用蒸気船。主に藩主が近場を巡る「御座船(ござぶね)」として使われており、諫早や伊万里への航海記録が残っている。実物は全長18メートルほどだと伝えられるが、船の図面や写真は残っておらず、現在は資料を基に復元した3D映像でしか、その姿を見ることができない(※1)。その伝説の実用蒸気船を、約1/3の大きさとなる全長5メートルの巨大レゴブロックで復元し、期間限定で展示するのがプロジェクト第1弾だ。
12月9日、日曜ということで地域の人々や、家族連れや多く訪れるなか、「三重津海軍所跡」に隣接する「佐野常民記念館」で、巨大レゴブロック「凌風丸」がお披露目された。
まずは、全長約5メートル、幅約1メートルという大きさにびっくり。シックな黒の外装に白い文様と、船底の赤いブロックが映える。御座船ということで、船上にはガラス張りのドアを模した船室までしっかり再現されている。この「凌風丸」を作るのに、約7万ピースものレゴブロックが使われているとか。制作したのは、国内最大規模のレゴユーザーグループSakuraの副代表も務める森田竜也氏。2016年からインターネット上で作品掲載をはじめ、その作品発表数は2018年11月現在で100点にも上る。レゴブロック作品コンテストでも数々の授賞歴を誇るブロックビルダーだ。もともと船が好きで、現在は“三重”県の“津”市で仕事をしているという、“三重津”とは遠からぬ縁。数々のレゴブロック作品を作ってきた森田さんにも、さすがにこれほど大きな作品を作るのは初めてということで、「タイトルどおり、『#みえつではじめて』の経験になりました」と笑顔。自宅の和室2間をまるまる使って制作したが、それでも足りずに、最後はガレージで仕上げたという。よく観ると各部分にさまざまな形や大きさのレゴブロックが使われていて、その芸の細かさには目を見張る。
今回のプロジェクトを企画したのは佐賀県肥前さが幕末維新博事務局長の脇山行人氏。「近代造船技術の礎を築いた『三重津海軍所跡』で、その技術の粋を集めた日本初の実用蒸気船『凌風丸』を展示することができてうれしい。ぜひ、多くの人に知ってもらい、三重津を盛り上げていきたい」とあいさつ。続いて、「佐野常民記念館」の諸田謙次郎館長が「よくこれを家で作れたなと驚きます。幕末維新期に作られた『凌風丸』が、平成最後の年に、再び三重津に帰ってきたことに感動を覚えます」と感想を述べた。さらに、博愛少年団の野田奈々さんと光吉遥佳さんも「実物を見るとすごい迫力。本物のようで、まるで動き出しそうです」と感心した様子。
この日は、除幕式に続いて、レゴブロックでミニ凌風丸を作るワークショップも開催された。これは、プロジェクトのために東京工業大学レゴ同好会監修のもと特別にデザインされたキット(50ピースのレゴブロック)を使っての実際にミニ凌風丸作りを体験するというもの。この日は特別に、東京工業大学のレゴ同好会のスタッフが参加し、子どもたちに作り方を教えてくれた。
「ミニ凌風丸」ワークショップは、12月16日(日)~2019年2月24日(日)まで毎週日曜日に開催される。9:30~、11:00~、13:00~.14:30~、16:00~の1日5回開催で、場所は、佐野常民記念館コミュニティ広場(12月30日(日)を除く)。毎回先着20名が無料で参加できる。ぜひ巨大レゴブロック「凌風丸」を見物しがてら、ワークショップにも参加してみよう。
さて、三重津海軍所跡のドライドック(※2)は、洋式船の修理用ドックとしては現存する国内最古のもの。通常ドック内の水は大型のポンプで組み出され排水されるが、当時はそのような機械がなかったため、三重津海軍所では、有明海の潮の干満差を利用して、満潮時に船をドック内に入れ、潮が引くことで自然に排水されるという仕組みになっていた。また、西洋のドックは主に石やレンガを材料に作られるが、三重津海軍所のドライドックは「木」や「土」、和船に使う「船釘」などを用いるという日本の伝統技術を駆使して作られた木製の遺構。そのため、地上で空気にさらされると風化してしまうことから、保護・保存の観点からドライドックは地中に埋め戻され、通常は実物をみることができないのだ。そんな見えない三重津海軍所跡の当時の様子を見ることができるのが、「みえつSCOPE」(VR機器)。2018年11月23日(金)にリニューアルされた「みえつSCOPE」では、これまで以上の臨場感で、当時の風景や訓練の様子を体験することができる。
【佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館】
住所:佐賀市川副町大字早津江津446-1
開館時間:9:00~17:00(みえつSCOPEの貸出は~16:30)
休館:月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、12/29(土)~2019年1/3(木)
料金:入館無料(展示室は有料)
公式HP:https://sano-mietsu-historymus
※1「凌風丸」の3D復元映像は、「三重津海軍所跡」に隣接する「佐野常民記念館」内の「みえつドームシアター」で見ることができる
※2 ドックとは、船を作ったり修理したりする施設のこと
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