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【インタビュー】しなやかな美術表現が語る無限の世界観/美術家・川崎泰史さんに聞く

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西山 健太郎
2017/06/02
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けやき通りのGALLERY MORYTA(ギャラリーモリタ)にて「韓美華・川崎泰史二人展」を開催中(~6/4)の美術家・川崎泰史さんにその作品や制作にかける思いについてお話を伺った。

美術家・川崎泰史さん

――川崎さんの作品はすごく特徴的だと感じるのですが、アートのジャンルでいうと何にあてはまるのですか?

「彫刻」ですね。英語だと「Sculpture」。日本語のイメージだと、“彫る”とか“鋳造する”とかいう意味に取られがちなのですが、正確には“かたちづくる”という意味なんです。日本語ってすごく細かいニュアンスまで含まれるので、かえって適当な表現が見つからない場合も多くあります。私自身、時と場合に応じて、作品のジャンルを「コンテンポラリーアート」と表現することもありますし、名刺の肩書も「彫刻家」ではなく「美術家」としています。

 

――川崎さんの名刺を拝見すると、「美術家」の隣に「蔵人」という肩書も入っていますね。

佐賀県鹿島市浜町にある富久千代酒造という酒蔵で働いています。「鍋島」という銘柄の日本酒をつくっている酒蔵なのですが、社長の飯盛直喜さんは “アートのあるまちづくり”をライフワークにされています。その一環として2015年に「酒造りを手伝いながら作品制作・展示やワークショップの開催などを通して地域貢献できるアーティストを求む!」という公募があり、その企画に応募し、採用していただいて、富久千代酒造の蔵人となりました。

 

――すると富久千代酒造の社長さんは川崎さんの“パトロン”というわけですね。

おっしゃるとおりです。ただ誤解してほしくないのが、“パトロン”と“アーティスト”は主従関係ではないということです。いうならば、アートを通して価値観を共有できる“ビジネスパートナー”のようなものだと思っています。私がプロデュースした「HAMASHUKU KURABITO」は、江戸時代に宿場町として栄えた肥前浜宿の通称“酒蔵通り”にある、かつての酒蔵を利用したアトリエ・ギャラリー兼カフェで、2016年春のオープン以来、県内外から沢山のお客様が足を運んでくださり、地元の人たちの憩いや集いの場にもなっています。これからもアーティストとして、町に活気や元気を呼び込むような企画を打ち出していけたらと思います。

展覧会のオープニングイベントでは「鍋島」の限定品が振る舞われた

――それでは作品について、お話を伺います。今回の展覧会のDMにも使用されている、《我が輩が君を守る》。この作品に込められた思いを教えていただけますか?

タイトルからお分かりのとおり、夏目漱石の『吾輩は猫である』から着想を得た作品です。『吾輩は猫である』は猫目線で人間社会の愚かさや微笑ましさを描いた作品です。先ほどお話した“パトロン”と“アーティスト”の関係と同じように、“人”と“猫”あるいは“飼い主”と“ペット”の関係は決して主従関係ではないということです。一緒に暮らしている猫に励まされたり、支えてもらったりしながら生きている、そんな人も数多くいると思います。そうした世界観を表現したのがこの作品です。

川崎泰史《我が輩が君を守る》(H230×W200×D200mm)

――陶器のような質感が印象的ですね。

FRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスティック)という素材でベースを作り、アクリル絵具で彩色しています。FRPはガラス繊維などの繊維をプラスティックの中に入れて強度や弾力性を強化したもので、自由自在な、そして細かな造形ができる、とても優れた素材です。

 

――川崎さんが美術家となったルーツやきっかけのようなものはありますか?

一つ思い当たることがあります。それは唐津くんちの「曳山」です。私は佐賀県唐津市で生まれ育ち、物心ついたころから、唐津くんちの「曳山」を目の当たりにしていました。その造形の素晴らしさに魅了されました。また、人の手で作ったものにもかかわらず、年月を経るうちにその“人の手”の感じが消滅していき、神秘的な存在感だけが残っているところ。それこそが、まさに私にとっての理想的な作品の姿であり、私自身、作品と向き合う中で、どのタイミングで手を加えるのをやめるか、という点にはかなり気を遣います。

川崎泰史《みどりの誘惑》(H400×W320×D220mm)

――今回の、展覧会開催は、昨年(2016年)に開催されたアートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA」の関連企画である公募展「AFAF AWARDS 2016」への出品、そして同展での入選が機になったと伺いました。

「AFAF AWARDS 2016」は「ART FAIR ASIA FUKUOKA」に出展するギャラリーが審査員となり、入選作家には票を投じたギャラリーでの展覧会開催資格が与えられる、という全国的に見てもすごく珍しい公募展です。プロのギャラリストに私の作品を選出していただき、大変光栄であるとともに、とても励みになりました。


――最後に、今後の抱負を教えてください。

たくさんの人にお会いして刺激を得たいと思っています。最近は、海外での展示やアートフェアへの出品なども意欲的に行っており、作品をたくさんの人に見てもらい、感じてもらうことで、その多様性、多面性というものが広がっていくと感じています。また、同世代のアートファンを増やす試みも手がけていきたいと思っています。私自身、お酒が大好きなので、お酒を味わいながらアートについて語り合うイベントなど企画してみたいですね。

 

――本日は興味深いお話をたくさん聞かせていただきありがとうございました。川崎さんの今後のご活躍を期待しています。


■展覧会概要

URL:http://www.g-morita.com/exhibition/2017/ex000492.html

■作家略歴

川崎泰史 / Kawasaki Yasuhito

1983年 佐賀県生まれ
2010年 金沢美術工芸大学 大学院 鋳金専攻 修了
2013年 NPO法人BEPPU PROJECT運営の共同アトリエにて制作する( -2015 )
2015年 富久千代酒造の支援により、佐賀県鹿島市に移住し、蔵人の仕事を始める
2016年 HAMASHUKU KURABITO(studio/art gallery/cafe)代表
《個展》
2014年 あいつなんて?ハテナ Fukagawa Bansho gallery <東京>
2012年 Contemporary Japanese new identity Fukagawa Bansho gallery <東京>
《アートフェア》
2015年 Young art Taipei、ART FAIR ASIA / FUKUOKA、KIAF/ART SEOUL、Daegu Art Fair、NEW CITY ART FAIR TAIPEI

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