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画家・堀越千秋、最後の講演/アートフェアアジア福岡2016より【レポート】

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西山 健太郎
2017/09/05
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昨年(2016年)10月、多くの人に惜しまれつつ亡くなった画家、堀越千秋さん。日本とスペインを拠点に活動を展開し、ANAグループ機内誌「翼の王国」の表紙絵や週刊朝日でのコラム「美を見て死ね」の連載など、画家・作家として多彩な才能を発揮した堀越さんの肉声を公の場で聞くことができた最後の機会、それが2016年9月10日、アートフェアアジア福岡2016の関連企画として福岡アジア美術館の企画ギャラリーで開催された特別講演会でした。アートフェアアジア福岡2017年開催直前のいま、堀越千秋さん最後の講演を振り返ります。

■エッセイの書き手として■

――本日の講演会名「美を見て死ね」は堀越さんが週刊朝日に連載中のエッセイのタイトルです。堀越さんは画家であるとともに日本でも指折りのエッセイストでもいらっしゃいますが、エッセイの題材はどのようにして選ばれるのですか?

基本的には目に入ったものをピックアップして思ったことを書くというスタイルです。自分が見たものを書かないとその文章の責任が取れませんし。とはいえ、700字程度ですから全く苦にはなりませんけどね。(笑)

 

――週刊誌での連載だからこそ気にしていることというのはありますか?

時事ネタは織り込むようにしています。政治のこととか最近だったらオリンピックのこととか。

 

――歯に衣着せぬ書きぶりで時折ドキッとさせられることがあります。読者を挑発するかのような“堀越節”も魅力の一つです。

やはり読者は意識しますよね。週刊朝日となると読者層は中高年が中心で、その人たちに何かを気づいてほしい、という思いは強いですね。書いている最中に私自身が気づくこともたくさんあります。

 

■気になる画家■

――それでは続いて絵に関するお話を聞かせていただきたいと思います。まず、堀越さんにとって印象に残る作家といえば誰でしょうか?

関根正二、村山槐多など、赤裸々な人生で若くして死んでしまった画家やその作品について広く人々に伝えたいと思いますね。あとは、仙厓とか。その生きざまに自分が乗っかるような形で自分の言葉で伝えたいという気持ちがあります。

 

――米内穂豊(よないすいほう)などについてもたくさん書かれていますよね。

米内穂豊は戦前から戦後にかけて活躍した日本画家ですが、戦時中は従軍画家としても活躍した作家です。私は昭和23年生まれなので戦争体験はありませんが、叔父からもらった「飛行機画報」という絵本雑誌でその作家を知りました。「飛行機画報」には勇ましい日本軍の絵が描かれていて、中国軍に日本軍が突撃するところなんかが描いてあるんですが、その中でも米内穂豊の絵は一番リアルで、子どもながらに、うまい絵を描くなあと感じました。

 

――いまでこそ、従軍画家が描いた戦争ものの絵画は国立近代美術館などでも展示されるようになりましたが、タブー視されてきた時代も長くありました。

本当は作家たちも戦争の絵なんか描きたくなかったと思いますよ。藤田嗣治の《アッツ島玉砕》なんか、一目見ただけで嫌な気分になりますよね。これを見て戦争に行きたいなんて誰も思わない。藤田の絵はすべて「厭戦画」です。軍部がよく通したなと。というか、絵のわかる人が軍部にいなかったんだね。(笑)

 

――堀越さんはご自身のエッセイで、現代社会の閉塞感や(戦争を予感させるような)あやうさについても書かれていますよね。

本当にそれは感じます。日本だけのことではなく、スペインでも「男性が3人集まったらいけない」とか「政治に関する会話をしてはいけない」とかいうような法案が通ったりしていますから。

 

■日本での活動■

――続いて、日本での活動について伺いたいのですが、堀越さんはご自身のことを「山乞食」と称して、埼玉県の神泉(かみいずみ)村に拠点を置き、陶芸や舞台芸術などを手掛けられています。

あいかわらず貧乏人が集まってきますね。(笑)

 

――若い人たちから刺激を受けることも多いとか。

12、3年前に焼物の窯をつくりまして、一人では何もできないんで、学生とか若い人にたくさん来てもらったんです。「飯と酒だけはあるから」と言ってね。今ではその若者たちの間にできた子どもが20人もいるんですよ。

 

――少子化が叫ばれて久しいですが、奇跡のようなお話ですね。

自然とくっついちゃうんですよね。馬が5、6頭いて乗馬クラブをつくっているんですが、クラブに30~40人いてそのうち半分くらいが結婚した。最年長はなんと60歳。(笑)

 

――私も訪れたことがありますが、ツリーハウスのような茶室があってすごく印象に残っています。

村の人たちも喜んでくれていますよ。その茶室で村の人たちに初めて抹茶をふるまったときには、「これ、抹茶アイスみたいな味!」と言った人がいて、その場にいたみんなで大笑いしました。

 

――山が一つのアトリエのような感じですよね。

舞台芸術の背景画なんかをつくるときは2、30メートルのスペースがいりますけど、山の中だと全然問題ない。

 

――それが舞台上に現れると本当に言葉にならない驚きが生まれるんですよね。

いまの舞台演出はコンピューターで何でもできるんですよ。ただ、楽しいこと、思いもよらないこと、今までになかったこと。そんな表現ができないか、と思って舞台芸術の中に山の自然を取り込もうと意識しています。次元を変えると物が違って見えるんです。

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