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江戸時代の道具がリビングに来たら!?人気雑貨店主と見る黒田家ゆかりの品々【レポート】

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アルトネ編集部
2017/10/06
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福岡市博物館では、休館中の福岡市美術館とのコラボレーション企画「市美×市博 黒田資料名品展」シリーズが開催されている。現在は「黒田家の婚礼」、「藩主夫人の愛した文物」をテーマに、黒田家の女性たちゆかりの品が展示中。
ARTNE編集部では、福岡市・薬院でキッチン、インテリア、家具など日々の暮らしを楽しむ道具の店B・B・B POTTERSオーナーの石井風子氏と共に本展を訪れ、現代の道具の専門家から見た展示品の魅力に迫った。もし、あの展示品が我が家のリビングにやってきたら?と想像しながらお楽しみいただけるレポートとなった。(編集部)

「黒田家の婚礼」「藩主夫人の愛した文物」展では、福岡藩主黒田家の婚礼に関する文書や調度品の数々が展示されています。歴史を動かす男性の陰で女性が表に出ることの少ない時代の中、婚礼はお家に関わる一大行事のひとつでした。黒田家もまた、婚姻によるお家安泰策が何代も続けられたそうです。お家のためのお輿し入れは覚悟を持ってのことだったはず。そのとき、衣装はもとより、日々の生活の調度品は心の拠りどころのひとつになっていたことでしょう。

今回は、調度品の数々を現代の私たちの暮らしに照らし合わせながら見てみました。時代と格の違いこそあれ、女性が生活で使っていたものたちは現代の私たちが見ても生活道具として通じるものがあります。そんな目線で見てみると、遥か彼方の江戸時代にタイムスリップしながら一味違った楽しみ方ができます。自分自身を顧みてみると、20代から長年生活雑貨を扱う仕事に関わり、 国内海外の生活道具に触れ、暮らしを楽しむ提案をSHOPでおこなってきました。また、婚礼というテーマについても、これまで数えきれないほど婚礼の引き出物のご相談やお祝いの相談を受け、お客様のリクエストにお応えしたりして、幸せのお裾分けを、嬉し涙しながら味わっています。そんな経験をもとに、展示を楽しませてもらいました。

松竹藤文(もん)蒔絵広蓋(ひろふた)
松竹藤文蒔絵広蓋 部分

松竹に藤の花と草木を金泥で絵画的に描き、黒田家の藤巴の紋と本多家の立葵の紋が見事にレイアウトされたモダンな広蓋。大切なお手周りのものや衣装を運んだり保存したりするのに使っていたもの。現代のリビングで使う細々としたものがこんなお盆にきれいに納まっていたらさぞかし気持ちが良くセンスのいいリビングになることと想像します。

 

島津十文字(しまづじゅうもんじ)藤巴紋提重

黒田家の藤巴と島津家の丸に十文字紋がつけられた、黒漆塗りの提重。弁当箱や食器と酒器が組み込まれ、屋外に手で運ぶ重箱として使われたもの。今でいうピクニックセットですね、何とも粋で洒落っ気のあるアイデア。どんなお料理とお酒が詰まっていたかと、想像するだけでも楽しくなります。

外でいただくお食事の気持ちよさや楽しさは、いつの時代も変わらない。こんな提重を持ってお花見に行きたいものです。家紋のレイアウトもまたモダンで遊び心を感じます。

 

黒田家家紋入什器(じゅうき)・調度(ちょうど)類
湯桶

大胆に家紋がつけられた黒漆塗りの菓子器や湯桶など。福岡城内や別宅などの御殿の日常生活で使われていたもの。和菓子をこんな蓋つきの器に入れ、お客様が来たときにここから銘々皿に、どうぞとお出ししてみたい。湯桶は何を淹れていたのでしょう、興味深々です。道具を使う楽しさはいつの時代も変わらないものですね。

 

姫道具(ひめどうぐ)

黒田家藩主の夫人やその娘、一族の女性が使ったとされる化粧道具の一部と布製の入れ物。今でいう化粧ポーチですね、いつの世も女性の乙女な心は変わらないことを実感します。使う道具は基本的には今と変わりませんね。

 

竹長春花文蒔絵箪笥(源氏物語入)
江戸時代初期(17世紀) 宝光院所持
福岡市美術館蔵
竹長春花文蒔絵箪笥 部分

源氏物語は武家の女性にとって基本的に必須の教養とされ、黒田家に嫁いだ女性に読み継がれていたといいます。この箪笥は、その本を入れる文箱、本が引き出しの中に入っている様子が奥ゆかしさとかわいらしさを感じます。今でいう文庫本サイズでしょうか。大きな本棚の中に、こんな文箱があったら秘密っぽくて何だかいいですね。

 

覚(奥女中(おくじょちゅう)・奉公人名元(なもと))
覚・差引書(御構御建銀(たてぎん))

これは番外で面白かったものです。タイトルの文字にある通り、福岡藩の奥向の運営に関わる予算の計算書や記録書。藩主、正室夫人、家族(息子、娘)など、人物ごとにそれぞれ予算建てが行われ決算された今でいうまさに決算報告書でしょうか。交際費や生活費から、御殿に仕える奥女中や奉公人への給金や給付する衣装や道具の費用などが書かれている。こんなものまで残っているなんて。それにしても仕事の内容は昔も今もなんら変わらない。

覚(奥女中・奉公人名元) 部分

仕えていた女性たちの名前が書かれた名簿に愛らしい名前がびっしり。私自身もSHOPではたくさんの女性スタッフと共に働き、苦楽を共にしながら今に至ります。この記録を見ていると、彼女たちの顔が浮かび、思わず微笑んでしまうのでした。

 

展示を見て、日本の婚礼の美意識を誇らしく感じました。輿し入れの儀式と同時に、日々の楽しみのための道具がいかに心の拠りどころとなっていたかも感じました。時代は変わりましたが、現代の婚礼の儀式にも昔の考えが重んじられて儀礼が残っているのはとても大切なことですね。

黒田家の婚礼の歴史を知ると同時に、日本の伝統の良さをいつもと少し違う角度から楽しめる展示です。そんな目線で今の生活に取り入れてみるのもなかなか乙な楽しみ方ではないでしょうか。源氏物語や時代劇をそんな目線で読んだり見たりする楽しみが増えるのもいいですね。

ぜひ、一度足を運んで、しばしタイムトリップしてみてはいかがですか。

 

石井 風子(いしい・ふうこ)
B・B・B POTTERSオーナー・(株)ウィークス企画ディレクター。 ”日々の暮らしを楽しむ道具の店”をコンセプトに、キッチン、インテリア、家具 を展開。 同店は2016年に25周年を迎え、記念本「はじまりは白い皿」を出版した。今後も福岡の街に息づく店となるよう目指している。

http://bbbpotters.com/

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