大野城心のふるさと館では、開館5周年記念特別展「白木原ベース サイドストーリー~街のなかのアメリカ文化、そしてPOP吉村伝説の誕生~」が開催中です。1950年代から70年代にかけて米軍基地の居住区・白木原ベースを中心に育まれた市民との交流、そこから世界のバイクレースで名を刻んだPOP吉村伝説を取り上げた本展の見どころを紹介します。
まず1階の特設会場。POP吉村こと吉村秀雄氏の足跡がわかるパネルがずらり。吉村氏が生まれた雑餉隈(現福岡市博多区竹丘町)は、米軍板付基地のすぐ近く。海軍少年航空学校や航空機関士を経て、終戦後故郷に戻り、実家の鉄工所の一角で「吉村モータース」(現ヨシムラジャパン)を設立します。そこで、高い整備技術とコミュニケーション能力を生かし、米兵から「POP(おやじさん)」と慕われたのが、POP吉村の由来です。
パネルには1960年代に雁の巣で行われていたレースの様子をはじめ、日本発の本格的耐久レース鈴鹿18時間耐久レース優勝、渡米後の第1回鈴鹿8時間耐久レース優勝など歴史の瞬間が収められた写真が並んでいます。この華々しい世界的な活躍は確かに「伝説」と言えます。
そして、その横に置かれているのが、2021年FIM世界耐久選手権初参戦でシーズンチャンピオンに輝いた「YOSHIMURA SERT Motul 2021 SUZUKI GSX-R1000Rレーサー」(ヨシムラジャパン所蔵)。それまでの多くのレース参戦で培われた技術が集約された車両とのこと。間近でじっくり観察することができます。
続いて2階の特設会場。こちらでは白木原ベースとアメリカ文化について紹介されています。板付基地の大野城市側に設置された東門から西鉄白木原駅までの600mほどが「白木原ベース通り」と呼ばれていました。会場には、通りの一部や米軍ハウスが再現されています。米軍の将校専門のテイラーや、当時では珍しいハンバーガーショップなど、米兵向けの商店が並んでいたそうです。
そのほか、1960年代に着用されたジャンパーや米軍ハウスで用いられた食器、ベース内のボウリング場で使用していたという道具一式など、現在ではなかなかお目にかかれない日用品が展示されています。
3階企画展室とホワイエには、POP吉村伝説とその手技が凝縮されています。バイクレースで世界の巨大メーカーを凌駕した要因は、市販のエンジンを高性能化させる吉村氏独自の技術。それらを体現した車両や部品が所狭しと置かれています。
吉村氏自身がチューンした「HONDA CB77 レーサー」(末永順三氏所蔵、岩下コレクション)、1983年の鈴鹿8時間耐久レースでエントリーした「1983 YOSHIMURA MORIWAKI GSX1000レーサー」(モリワキエンジニアリング所蔵)、レース専用のチタン製サイクロン、手で曲げた曲線が芸術的なエキゾーストパイプなどが展示されています。
日本人で初めて本田宗一郎氏とともにアメリカン・モーターサイクリスト・アソシエーション(全米モーターサイクル協会)に殿堂入りした際のメダル、その本田氏から送られた直筆の絵など、伝説を彩る展示品ばかりです。
復元した作業小屋も必見です。工具も当時のものとのこと。この小さな一角からひたむきな努力で栄光をつかんだ吉村氏。その情熱が感じられる原点です。
「白木原ベース」と「POP吉村伝説」。2つの物語が結びつくと、戦後米軍基地から生まれたアメリカ人との交流が地域にもたらした影響がよく見えてきます。かつてアメリカがあった街、ぜひその歴史の一端に触れてください。
最後に、本展に関連するグッズを紹介します。特別展図録(税込500円)には、白木原ベースや米軍ハウスの調査結果、吉村氏にまつわる資料が詳しく掲載されています。大野城市周辺の地域史や福岡から世界に羽ばたいた吉村モータース(現ヨシムラジャパン)の成り立ちをより深く知ることができます。
ほかにも、ヨシムラジャパンやモリワキエンジニアリングのタンク型ケースにステッカーなどが入った特別展限定グッズ(税込1,600円)、スズキ歴代GPマシンのマスキングテープ(税込990円)なども販売中です。
=====================================
大野城心のふるさと館開館5周年記念特別展
白木原ベース サイドストーリー~街のなかのアメリカ文化、そしてPOP吉村伝説の誕生~
日程:4月25日(火)~6月18日(日)
場所:大野城心のふるさと館(福岡県大野城市曙町3丁目8-3)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)
料金:一般300円(250円)、高校生以下無料
※( )内はここふる友の会会員料金、20人以上の団体料金
※詳細はホームページをご確認ください